ラーヤと龍の王国

2021年
監督 ドン・ホール、カルロス・ロペス・エストラーダ
(あらすじ)
“龍の石”の守護者ベンジャの一人娘であるラーヤは、友だちになれると信じたファング国首長の娘ナマーリの裏切りにあって龍の石を壊してしまい、それによって封印されていた魔物ドルーンを復活させてしまう。それから6年後、18歳になったラーヤはようやく“最後の龍”シスーを探し出すことに成功し、ドルーンによって荒廃してしまった世界を救うため、シスーと一緒に龍の石のかけらを集める旅に出る…


アナと雪の女王2(2019年)」に続くディズニー製の最新CGアニメ。

我が国でも本年3月に劇場公開されたのだが、Disney+からも同時配信(有料)されることが嫌われたせいか、近所のシネコンでは上映が見送られてしまう。映画館へ行くことを思えばDisney+の追加料金なんて安いものなのだが、まあ、それほど急いで見る必要もないだろうということで、追加料金なしで見られるようになるのを待って家族で観賞。

さて、舞台になるのはどこか東南アジア的な雰囲気を漂わせるクマンドラという世界であり、かつては多くのドラゴンに見守られた人々が皆一緒になって幸せに暮らしていたらしい。しかし、魔物ドルーンとの戦いでドラゴンが絶滅してしまって以降、人々の間に不信感が広がってしまい、今では5つの国に分かれて互いの覇権を競っている、というのが本作の設定。

このことからも明らかなとおり、本作のテーマは“信頼”であり、それを勝ち得るためには自ら率先してその手にした剣を投げ捨てなければならない。言うまでもなく、これは我が国の憲法第9条の精神であり、日本の子どもたちはそのことを誇りにして良いと思うのだが、残念がら我が国にもそれを信じない人々が少なからず存在するようであり、やはりラーヤのような勇気ある行動が待ち望まれているのだろう。

ちなみち、本作の龍がこの“信頼”を表しているのは言うまでもないが、それに対し、触れただけで人を石に変えてしまうというドルーンは“不信感”の象徴。水と龍の石が放つ光を苦手とするが、特に意識は有していないようであり、形状は黒い霧のようなものとして描かれている。娘によると、最近はこのように悪役を非人格化して表現する手法が流行りらしいのだが、気を付けないとメッセージ性を弱めてしまうかもしれないところがちょっと心配ではある。

ということで、コロナ禍前のような派手な宣伝は控えられてしまった故、マスコミ等でほとんど話題にもならなかった作品であるが、ストーリーは良く練られており、蘇った多くの龍が大空を駆け回るラストシーンはTV画面で見るのではちょっと勿体ない。コロナ禍が一段落してからでも良いので、劇場公開とネット配信との関係をきちんと見直して欲しいところです。