ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男

今日は、妻&娘と一緒に今年のアカデミー賞で何かと話題になった「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」を見てきた。

今週末も(やや粒は小さいが)洋画の話題作の公開が目白押しであり、娘と何を見に行くか協議したところ、本作とスピルバーグの「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」の2本が最終候補に残る。最後の決断を妻にお願いしたところ、見事、本作が彼女のお眼鏡に適ったようであり、家族一同納得して映画館へ向う。

さて、ストーリーは、ベルギーやオランダ、フランスにおけるヒトラーの圧倒的優勢が報じられる中、英国の首相に就任したチャーチルの苦悩を描いており、ダンケルクで30万人以上の兵士が窮地に立たされていることを知らされた彼は、政敵らの主張するとおりヒトラーとの和解交渉に応じるべきか否か、歴史的決断を迫られることになる。

まあ、結果は周知のとおりであり、対独徹底抗戦を訴える彼の議会での演説が満場一致の拍手で迎えられるところで一応のハッピーエンドとなるのだが、実際はそれから5年間に渡り悲惨な戦争が世界中で繰り広げられた訳であり、もし、違う結果になっていたら、この決断に対する世間の評価も大きく変っていたかもしれない。

しかし、本作の見所はそんな歴史的な事実ではなく、あくまでもウィンストン・チャーチルという興味深い人物のキャラクターを愛でることにある訳であり、アカデミー主演男優賞に輝いたゲイリー・オールドマンの演じる彼は、(65歳という年齢設定にもかかわらず)とにかくとても可愛らしい。

125分の上映時間中、ほぼ出ずっぱりの状態なのだが、その間に彼の見せてくれる表情は正に多彩であり、自己主張の激しい横柄な態度の裏側には自らの弱さ、未熟さを素直に認める謙虚な一面が隠されている。おそらく、現在まで続くというチャーチルの人気の理由はこの“誠実さ”にある訳であり、それは同時に現在の我が国のリーダーに最も欠けている資質なのだろう。(まあ、欠けているのはそれだけではないのだが…)

ということで、監督を務めているジョー・ライトの絵作りの巧みさは本作でも十分発揮されており、戦争物をこれだけ叙情的に描けるのは彼しかいないんじゃないのかなあ。また、本作に二つ目のアカデミー賞をもたらした辻一弘の特殊メイクも見事であり、クローズアップの連続にもかかわらず、チャーチルの表情等に全く違和感はありませんでした。