1949年作品
監督 ロバート・Z.レオナード 出演 ジュディ・ガーランド、ヴァン・ジョンソン
(あらすじ)
楽器店の販売主任であるアンドリュー(ヴァン・ジョンソン)は、女っ気の無い独身男。実は、彼には何でも打ち明けられる大切な文通相手がいるため、現実の女性は目に入らないらしいのだが、そんなある日、ベロニカ(ジュディ・ガーランド)という女性が店員に雇って欲しいと店を訪ねて来る。店主に代わって応対したアンドリューは、人手は足りているからと言って断ろうとしたのだが….
エルンスト・ルビッチの「桃色(ピンク)の店(1940年)」のミュージカル版。
アンドリューとベロニカはこの少し前にも街中で偶然出会っており、そのときのお互いの印象も最悪。結局、得意の歌声を活かして店主(S.Z.サコール)の目の前で客に商品を売り込むことに成功したベロニカは、無事、雇ってもらえることになるのだが、同僚となった後もアンドリューとベロニカの仲はギクシャクしたまんま。
実はベロニカにも心に秘めた文通相手がいて…という展開にもはや新鮮味は薄いのだが、人の良い店主のオットーと古くからその店に勤めている心優しい老嬢との結婚話を絡めたストーリーは決して悪くない。ちょっとだけセリフを話すバスター・キートンも出てくるし、商品のハープを使ったギャグもなかなか面白い。
やはり弱点は主役の二人であり、神経衰弱のために「アニーよ銃をとれ(1950年)」、「ブロードウェイのバークレー夫妻(1949年)」と立て続けに主役を降ろされていた当時のジュディ・ガーランドの歌声や演技からは、彼女の最大の魅力であるはずの“生命力”があまり伝わってこない。
本来であれば、もう一人の主役であるヴァン・ジョンソンがパートナーとして彼女を支えるべきなのだが、どういう訳か本作では歌も踊りも全く見せてくれない。また、(こちらは当然であるが)演技力の面でも本家である「桃色(ピンク)の店」のジェームズ・スチュワートには遠く及ばないということで、正直、何のために出演したのか理解に苦しむ。
ということで、作品の出来自体は今一つといったところなのだが、ジュディ・ガーランドのファンとしては、彼女の日本未公開作品を見られただけでとりあえずは満足。「ザッツ・エンタテインメント(1974年)」で使われていたライザ・ミネリの“デビュー作”というのは、この作品のことだったんですね。