ジュディ 虹の彼方に

2019年
監督 ルパート・グールド 出演 レネー・ゼルウィガージェシー・バックリー
(あらすじ)
1968年。かつてのミュージカル・スターのジュディ・ガーランドレネー・ゼルウィガー)も今ではハリウッドから見放されてしまい、幼い子どもたちと一緒のステージで何とか日銭を稼ぐ日々。家賃滞納のために定宿にしていたホテルからも追い出されてしまった彼女は、やむなく元夫に子どもたちを預け、いまだ根強い人気のある英国ロンドンに渡って再起を図ろうとしたのだが…


レネー・ゼルウィガーがアカデミー主演女優賞に輝いたジュディ・ガーランドの伝記映画。

大好きなジュディ・ガーランドの役を、これまたお気に入りの女優さんの一人であるレネー・ゼルウィガーが演じてくれるということで、当然、映画館に駆けつけるつもりでいたのだが、突然のコロナウィルス感染の恐怖に打ち克つことが出来ず、やむなく鑑賞を断念。ようやくU-NEXTの有料配信で見ることが出来た。

そんな訳で、とても見るのを楽しみにしていた作品なのだが、いざ見てみるとこれがとてつもなく辛い映画に仕上げられており、118分の上映時間中、クスリとでも笑えるシーンはほとんど出てこない。ジュディ・ガーランドの伝記映画なので、当然、歌唱シーンも出てくるのだが、最初に歌われる“By Myself”を聴いてもとても楽しい気分になんかなれはしない。

その最大の理由はジュディの全盛期の華やかなエピソードがごっそり抜け落ちているせいであり、娘時代のエピソードとして語られるのはプロデューサーのルイス・B.メイヤーと鬼母エセル・ガムによるクスリ漬けの青春。まあ、あれだけ覚醒剤睡眠薬を飲まされていたのでは、心身に異常を来すのは当然のことだろう。

そして、そんな彼女を演じているのは長年のブランクから復帰したレネー・ゼルウィガーであり、個人的には「ミス・ポター(2006年)」以来になるのだが、正直、かつてのポッチャリした可愛らしい風貌とは全くの別人。詳しくは知らないが、おそらく彼女もブランク期間中に様々な困難に遭遇したに違いなく、その滲み出るような“辛さ”がジュディのそれに重なって、もう、見ているだけで痛々しい。

ということで、とてつもなく辛い映画に仕上げられているのだが、だからこそほんの些細なエピソードがいっそう深く心に染みる訳であり、ラストの「虹の彼方に」の大合唱は決して忘れることの出来ない感動的なシーン。正直、監督のルパート・グールドは大きな賭に出たのだと思うが、少なくとも俺にとっては大正解だったと思います。