戦場

1949年作品
監督 ウィリアム・A.ウェルマン 出演 ヴァン・ジョンソン、ジョン・ホディアク
(あらすじ)
1944年12月。フランスを開放し、すっかり戦勝気分でいた米国陸軍第101空挺師団のI大隊の兵士たちに、突然、出動命令が下る。どうやらドイツ軍が捨て身の反撃に出たらしいのだが、ホーリー(ヴァン・ジョンソン)やジャーヴィス(ジョン・ホディアク)をはじめとするウォルウィッツ曹長率いる小隊の隊員たちは、詳しい戦況も知らされないまま、ベルギーのバストーニュをドイツ軍から死守する任務に就くことになった….


ウィリアム・A.ウェルマン監督が「G・Iジョー(1945年)」の4年後に公開した戦争映画。

第二次世界大戦の末期、西部戦線におけるドイツ軍最後の大反撃として有名な「バルジの戦い」が舞台となっている訳だが、「G・Iジョー」のときと同様、本作はあくまでも末端の歩兵レベルの視線から描いているため、今、自分達が直面している戦闘が作戦全体の中でどのような意味を持っているのか、彼等自身、全く不明のままでストーリーは進展する。

そんな彼等の置かれた状況を暗示するかのように、戦闘自体も霧の立ちこめた森林地帯において手探り状態で行われるため、どことなく閉塞感のようなものが漂っており、派手なアクションシーンなんかはほとんど登場しない。まあ、これは、連合軍の制空権を無効にする狙いでドイツ軍があえて悪天候の時期を選んだせいであり、史実どおりらしいんだけどね。

予算上の都合もあったんだと思うが、出演者の方も見事なくらい地味な顔触れを揃えており、俺が名前を知っていたのは主役格のヴァン・ジョンソンくらい。しかし、彼の扮するホーリーは、村娘を好きになったり、盗んだ卵でオムレツ(?)を作ろうとしたりと、著しく戦闘意欲の欠けたキャラであり、英雄というのからは程遠い存在。

他の隊員達にしても、本国に帰れる日やパリで過ごすクリスマスなんかを楽しみにしていたところを急に出動させられたような心理状態であり、ただ自分達が生き残るためだけに目の前の敵と戦っている、っていうのが彼等の本音っぽい。決して声高に反戦を主張している訳ではないものの、ここまで“ヒーロー不在”を徹底させた戦争映画も珍しいと思う。

ということで、「G・Iジョー」と「中共脱出(1955年)」のほぼ中間の時期に公開された本作は、終戦後に作られたせいで娯楽性は高くなっているものの、メッセージ的には前者と共通する部分の多い“まとも”な作品だった。さて、引き続きウェルマン監督の転向の秘密解明のため、次はいよいよジョン・ウェイン主演の「男の叫び(1953年)」を見てみようと思います。