つばさ

1927年作品
監督 ウィリアム・A.ウェルマン 出演 チャールズ・バディ・ロジャースクララ・ボウ
(あらすじ)
米国のある田舎町。機械好きのジャック(チャールズ・バディ・ロジャース)は、隣家のメアリー(クララ・ボウ)が彼に好意を持っていることにも気づかず、都会から来た別の女の子に夢中。しかし、その彼女は名家の御曹子デヴィッドと相思相愛の仲だった。やがてアメリカが第一次世界大戦に参戦することになり、ジャックとデヴィッドは同じ飛行部隊に配属されることに….


ウィリアム・A.ウェルマン監督による栄えある第一回アカデミー作品賞受賞作。

当然、サイレント映画な訳なんだけど、複葉機同士による華麗なる空中戦や戦車まで登場する大迫力の地上戦の様子等が140分という上映時間いっぱいに詰まっており、一部には実際の戦争における実写フィルムなんかも流用しているのかもしれないけど、もう、掛け値なしに“大作”の風格十分。

まあ、ストーリーの方は比較的単純で、ジャックとデヴィッドによる男同士の友情が軸になって、そこにコメディリリーフとしてメアリーが絡むという展開。しかし、男同士の友情の方には悲劇的な結末が待っており、ここらへんに反戦的なメッセージを読み取ることができるのも、いかにもこの監督の作品らしい。

また、出演者のほうでは“It女優”として有名なクララ・ボウが出ている。俺は、今回初めて動いている彼女を見た訳だけど、想像していたのとは全く違ったタイプの女性であり、セクシーというより、とても元気な女の子っていう感じ。でも、恋するジャックにフラれっぱなしのメアリーはとてもいじらしく、あの、ちょっと能天気過ぎるパッピーエンドも彼女のお陰で何とか許容出来た。

それと、これは見終わってから知ったんだけど、前半にジャックとデヴィッドの先輩として出てくるちょっとクールなホワイト中尉を演じていたのは、なんと若き日のゲイリー・クーパーだったとのこと。登場するのはほんの短い時間だけなんだけど、確かにとても印象的な二枚目ぶりだった。

ということで、緊迫感のある戦闘シーンとダレ場との落差がちょっと極端すぎる(=別の作品を見ているみたい!)など、まあ、見ていて違和感を覚える個所もないではないが、とにかくこの大作をまとめ上げた手腕はお見事であり、やはりウィリアム・A.ウェルマンは只者ではありませんでした。