野性の叫び

1935年作品
監督 ウィリアム・A.ウェルマン 出演 クラーク・ゲイブル、ロレッタ・ヤング
(あらすじ)
ゴールドラッシュに沸く20世紀初頭のアラスカ。昔馴染みのショーティからまだ世間に知られていない新しい金鉱の話を聞かされたジャック・ソーントン(クラーク・ゲイブル)は、彼と一緒に、一足先にそこへ向かっているというブレイク夫妻の後を追うことを決意。旅支度のためにソリを曳かせる犬を買いに行ったジャックは、そこでバックというセントバーナード犬と出会う…


細々と続けているウィリアム・A.ウェルマンの監督作品を見るシリーズの第何回目か。

ジャック・ロンドンの有名な小説は読んでいないのだが、随分昔にそれをドラマ化した作品をTVで見たという記憶が残っており、ひょっとしたら本作がその作品なのではないかとちょっと期待していたのだが、残念ながらそうではなかったらしい。

大体、原作の主人公は犬のバックなのだが、本作の主役はクラーク・ゲイブルが演じている陽気なアメリカ人のジャックの方であり、雪山で行方不明になってしまったジョン・ブレイクの未亡人(?)であるクレア(ロレッタ・ヤング)とジャックとの恋物語が本作ストーリーで大きなウエイトを占めている。

もちろんバックも出演しており、あの重い荷物を載せたソリを見事に引っ張ってみせるという感動的なシーンもちゃんと登場するのだが、彼の見せ場らしいところはそこだけであり、最後は雌オオカミとの間に可愛らしい子犬(?)を授かるというアットホーム感満載の幕切れ。残念ながら、昔見たTVドラマから感じた“大自然の厳しさ”みたいな印象は極めて希薄な内容であった。

とはいっても、(アラスカかどうかは不明だが)豪雪地帯で行われたロケの映像はなかなかの迫力であり、そんなところにウィリアム・A.ウェルマンらしい誠実さを感じ取ることは出来る。一番印象に残っているのは雪解けで道がドロドロになった街中の映像であり、あの泥濘の深さは30cmくらいあるのではなかろうか。泥濘の上をソリを使って通行しているシーンも面白かった。

ということで、この原作は1972年にもチャールトン・ヘストンの主演で映画化されているそうであり、俺が見たのはそっちの作品だったかもしれないのかもしれないなあ。残念ながらDVD化の予定は無いようであり、仕方ないので原作小説の方でも読んでみようかと思っています。