牛泥棒

1936年作品
監督 ウィリアム・A.ウェルマン 出演 ヘンリー・フォンダダナ・アンドリュース
(あらすじ)
1885年のネバダ州で一人の牛飼いが射殺され、牛が盗まれるという事件が発生。折悪しく保安官は不在であり、犯人をリンチにかけるべきと主張する連中が中心となって捜索隊が結成されることになった。たまたまその場に居合わせたギル・カーター(ヘンリー・フォンダ)も、行きがかり上捜索隊に参加することになるが….


先日見て結構面白かった「廃墟の群盗(1948年)」と同じ監督による西部劇。

捜索隊は、野宿をしていた3人の不審な男達を捕まえるんだけれど、彼等をその場で縛り首にするか、それとも町に連れ帰って裁判にかけるかということで対立。ヘンリー・フォンダ扮するギル・カーターは、当然、後者の意見を主張する訳であるが、後の「十二人の怒れる男(1957年)」のときのようには上手くいかず、結局、最悪のバッドエンドを迎える。

牛泥棒という題名にもかかわらず、大群どころか牛の一頭も登場しないという地味〜な作品であるが、この捕えられた3人に扮するのは、ダナ・アンドリュースアンソニー・クインそれにフランシス・フォード(=ジョン・フォードの兄で、無声映画時代の大スター)となかなか豪華。

他の登場人物も、一人ひとりがそれぞれ明確なキャラクターを与えられて描かれており、75分という短い上演時間の中でこれだけ大勢のキャラの描き分けが出来ているのはちょっと凄い。まあ、ギル・カーターとその町との関係が良く解らなかったり、途中に出てきた彼の元恋人とのエピソードがその後のストーリーに全く生かされていなかったりと、シナリオ的には不満もあるが、作品全体のテーマと雰囲気は相当優れた作品だと思う。

作品の最後に戦時国債のコマーシャルが出るような時代の作品なんだけど、そんな単純な“正義”が求められる時期にあって、敢えてこういった複雑なテーマを取り上げるということは、我が国ではちょっと考えられないことだろう。

ということで、監督のウィリアム・A.ウェルマンについては、これまで特に意識して作品を見たことはなかったが、単にベテランというだけでなく、なかなか格調のある立派な作品を撮る監督だということが良く解った。あまり多くの作品がDVD化されている訳ではなさそうだが、これからはちょっと気を付けて見てみることにしよう。