帰郷

1978年作品
監督 ハル・アシュビー 出演 ジェーン・フォンダジョン・ヴォイト
(あらすじ)
海兵隊大尉である夫のボブがベトナムに出征してしまい、一人残されたサリー(ジェーン・フォンダ)は傷を負って帰還した大勢の軍人たちが収容されている病院でボランティアとして働くようになる。彼女は、そこで高校時代の同級生だったルーク(ジョン・ヴォイト)と偶然再会するが、戦争で両足の機能を失ってしまった彼の気持ちはすっかり荒んでおり、彼女と打ち解けようともしなかった….


ジェーン・フォンダジョン・ヴォイトが揃ってアカデミー賞の主演女優賞と男優賞を獲得した作品。

舞台となるのは海兵隊基地の付属病院があるロサンゼルスのサンタモニカであり、ベトナムでの戦闘シーンは一度も登場しないばかりか、ストーリーの大半を占めているのはサリーとルークの不倫話。しかし、要所々々に心や体に深い傷を負ったベトナム帰還兵の姿や、彼らの悲惨な体験談を配することにより、立派な反戦映画になっている。

ハノイ・ジェーン」と呼ばれたジェーン・フォンダが主演しているということで、当初、彼女の扮するサリーが次第に反戦運動家として目覚めていくというストーリーを予想していたのだが、あにはからんや、サリーは最後までルークとボブの間で心が揺れ動く一般人の人妻のまんま。

結局、彼女が直接反戦を訴えるようなシーンは一度も登場しないのだが、まあ、1973年のパリ協定から5年の歳月が経過していたとしても、ジェーン・フォンダがそんなキャラを演じるとやはり“だから言ったじゃない”的なニュアンスで受け取られかねない故、こういった抑制の効いた脚本に落ち着いたのかもしれない。

この年にはあの「ディア・ハンター(1978年)」も公開されており、アカデミー賞で作品賞や監督賞を獲得したこともあって、我が国の評価としてはそっちの方がずっと高かったような気がするのだが、実は脚本賞は本作が受賞しており、あちらでは非常に高い評価を受けたらしい。

ということで、本作でも映像のバックに当時のロックの名曲が沢山使われているのだが、オープニングとエンディングに「Out of Time」が採用されたストーンズの存在感が圧倒的。他にも「Jumpin' Jack Flash」、「Ruby Tuesday」等、彼等の曲が多数使われており、ハル・アシュビーの趣味良さを窺わせてくれます。