スワンプ・ウォーター

1941年作品
監督 ジャン・ルノワール 出演 ダナ・アンドリュースウォルター・ブレナン
(あらすじ)
ジョージア州にある広大なオーキフェノーキー湿原の近くに両親と一緒に住んでいる青年ベン(ダナ・アンドリュース)は、行方不明になった愛犬を探すため、父親の警告を無視して単身巨大なワニや毒蛇が生息する湿原へと向かう。しかし、そんな彼に襲いかかってきたのは、殺人犯として長い間逃亡を続けていたトム・キーファー(ウォルター・ブレナン)であり、彼はベンに自分が無実であることを告げるのだが….


ジャン・ルノワールアメリカに渡って初めて撮った異色西部劇。

トムを無実の罪に陥れた“悪”の存在というのが本作のストーリーの底流となっており、それはベンの両親(=厳格な父親のサーズデイと若くて美しい後添えのハンナ)の夫婦仲にも暗い影を投げかける。トムのもったいぶった口ぶりやハンナの異様とも思える怯え方から、その黒幕がサーズデイと何らかの特殊な関係にあるような気もするのだが、結局、その正体は不明のままストーリーは後半へ。

そして、ベンがある出来事を目撃したことからトントン拍子にその黒幕の正体が明らかになっていくのだが、その解決の契機となった出来事が豚泥棒ということからも分かるとおり、犯人は黒幕のイメージから程遠い単なるチンピラであり、当然、サーズデイとも無関係。トムを殺害しようとベンの跡をつけて湿原へ入った犯人たちは、逆にトムの罠に嵌められて一巻の終わり。

先日拝見した「南部の人(1945年)」と比べると随分お金がかけられている印象であり、ジャン・ルノワールのハリウッド初監督作品に対する期待の高さが窺われるのだが、ちょっとエピソードを詰め込みすぎたため、基本となるストーリーが貧弱になってしまったのかもしれないなあ。

共演者もサーズデイ役のウォルター・ヒューストンを筆頭に、アン・バクスタージョン・キャラダイン、ウォード・ボンド、ユージン・パレットと豪華な顔ぶれが並んでおり、彼らが登場する個々のエピソード自体はなかなか面白いのだが、ここはある程度テーマを絞り込み、トムとサーズデイにもっとウエイトを置いたストーリーにするべきだったと思う。

ということで、トムは(ラストのほんの数分を除き)湿原で単独生活を送っているという設定のため、ウォルター・ブレナンの出番はあまり多くないのだが、それでも見る者に強烈な印象を残しているのはいつもながら素晴らしい。ウォルター・ヒューストンとの演技合戦もじっくりと見てみたかったところです。