艦隊を追って

1936年作品
監督 マーク・サンドリッチ 出演 フレッド・アステアジンジャー・ロジャース
(あらすじ)
米国艦隊がサンフランシスコに入港。元ダンサーの水兵ベイク(フレッド・アステア)はその街のダンスホールで昔のダンス・パートナーだったシェリー(ジンジャー・ロジャース)と偶然に再会する。一方、ベイクの同僚ビルジも、シェリーを訪ねてきた姉のコニーと知り合いになるが、彼女の真面目すぎる性格がどうしても性に合わない….


アステア&ロジャースが、「トップ・ハット(1935年)」の翌年に出演した作品。

彼等二人が扮するベイク&シェリーの“仲直り”と並行して、ビルジとコニーの恋愛模様も描かれているんだけど、どうもこっちの方がミュージカルにしてはちょっと深刻すぎであり、作品全体の雰囲気を損ねているような印象が強い。

まあ、真面目で結婚願望の強いコニーの方は許せるとして、彼女の気持ちを知りながらそれと真剣に向かい合おうとしないビルジは何ともイヤな奴であり、最後の最後でコニーの深い愛情に気付いて改心するというハッピーエンドも、いかにも取ってつけたような展開で素直に納得できない。

このビルジに扮しているのは、若き日のランドルフ・スコットな訳であるが、その中途半端な二枚目ぶりと同様、本作でのキャラクター設定も中途半端であり、「トップ・ハット」等で主演の二人を盛り上げてくれたエドワード・エヴァレット・ホートン以下のお笑いトリオとはエライ違いである。

とはいっても、アステア&ロジャース・コンビ全盛期の作品であり、彼等のダンスはその欠点を補って余りある程に魅力的。アステアの“水兵”という設定を考慮したためか、前作に比べると軽快なタップ・ダンスの占めるウエイトが高くなっているようであるが、最後の「Let’s Face the Music and Dance」(=アーヴィング・バーリンの作詞作曲)なんかは歌もダンスも思わずウットリとしてしまう素晴らしい出来である。

ということで、これでアステア&ロジャース主演作品を3作見たことになる訳だが、良かれ悪しかれ、ストーリーはいずれも単純な“ボーイ・ミーツ・ガール・ストーリー”以上の内容になっていたのはちょっと嬉しい誤算。やっぱり、このへんは実際に見てみないと分らないもんだなあ。