恋愛手帖

1940年作品
監督 サム・ウッド 出演 ジンジャー・ロジャース、デニス・モーガン
(あらすじ)
キティ・フォイル(ジンジャー・ロジャース)はニューヨークの化粧品店で働くOL。ある晩、彼女に思いを寄せる医師のマークからプロポーズされ、これを承諾して自分の部屋に帰ってくると、そこには彼女の初恋の相手であるウィン(デニス・モーガン)が待っていた。既婚者である彼から南米へ一緒に駆け落ちしようと誘われたキティは、一度はイエスと答えたものの、鏡に映った自分の分身の勧めで自分のこれまでの生き方を振り返る….


「カッスル夫妻(1939年)」で、一度フレッド・アステアとのコンビを解消したジンジャー・ロジャースが、その翌年に主演した作品。

金持ちのお坊ちゃんであるウィンと貧乏医師のマークという二人の男性の間で揺れ動く女心を描いた作品であるが、ラブコメを期待させる邦題とはちょっと異なり、結婚→離婚→妊娠→死産と続くキティの半生は結構シリアスで重たい内容。

しかも、最後はキティが自分自身の考えで二人の男性のうち一方を選択するという結末になっており、こういった“自立した女性”がテーマになっている作品は当時としては珍しかったのかもしれない。本編とは直接関係ないんだけど、作品の冒頭、昔に比べて女性が強くなったっていうことをコミカルに紹介する映像が流れるのもちょっと面白かった。

主演のジンジャー・ロジャースにとっては、ミュージカル女優からの転身を図った作品であり、本作で見事アカデミー主演女優賞を受賞している。まあ、見ていて特に印象に残るような演技ではなかったと思うんだけど、彼女がダンス抜きでもこれだけの演技ができたことへのご褒美的な意味合いがあったのかも知れない。

ということで、本作の成功によって演技派女優への道を歩み出したジンジャー・ロジャース。本作公開当時29歳というやや遅めの再スタートだったにもかかわらず、この後もビリー・ワイルダージュリアン・デュヴィヴィエハワード・ホークスといった名監督とともにそれなりの実績を残したあたりは、やはりなかなか大したものというべきなんでしょう。