四十二番街

1933年作品
監督 ロイド・ベーコン 出演 ワーナー・バクスター、ビービー・ダニエルズ
(あらすじ)
ブロードウェイの新作レビュー“プリティ・レディ”の演出を手がけることになったのは、ヒット作を連発しているジュリアン・マーシュ(ワーナー・バクスター)。主演は、スポンサーであるデュランがご執心のドロシー・ブロック(ビービー・ダニエルズ)に決まっているのだが、他の出演者を選ぶためのオーディションが開催され、新人のペギーもコーラス・ガールの一人に選ばれる….


春の珍事(1949年)」からのロイド・ベーコンつながりで鑑賞した伝説的ミュージカル。

いわゆる“バックステージもの”に属する作品の一つであり、新作レビューの製作に関わる舞台裏が描かれている。したがって、歌や踊りはこのステージのための練習と本番のシーンにしか登場せず、登場人物が会話の途中から突然歌い出すといった非現実的なシーンが出てこないのは、まあ、かえって今日的なのかもしれない。

特にドラマ部分のストーリーはなかなか複雑であり、過労と株価大暴落による心労から本作を限りに引退を考えている演出家ジュリアンの本作にかける執念を背景に、スポンサーのデュランとかつてのパートナーである恋人パットとの板ばさみに苦悩するドロシーや、天真爛漫な性格で新進歌手のビリー(ディック・パウエル)をはじめ周囲の人間を惹きつけるペギー(ルビー・キーラー!)といった魅力的な登場人物が見応えのあるドラマを展開してくれる。

そして、そんなストーリーがようやく一段落したところで幕を開けるのが、彼等が心血を注ぎ込んで取り組んできた新作レビューの“プリティ・レディ”であり、まあ、実際に見られるのはそのほんのサワリの部分だけなのだろうが、これが公開から80年以上経った現在でも十分鑑賞に耐える素晴らしい出来。ラストの名曲“四十二番街”は、見終わった後もしばらくは耳を離れなかった。

まあ、正直、ロイド・ベーコンの演出はかなり荒っぽく、特にペギーの心の動きなんかは見ていてちょっと理解し難いところもあるのだが、これだけ盛り沢山な内容を90分足らずの上映時間の中に詰め込んだ才能はきちんと評価されるべきだろう。

ということで、コーラス・ガールの一人に、フレッド・アステアとコンビを組む寸前のジンジャー・ロジャースが出ており、登場シーンは多くないものの、ドラマをハッピーエンドに導く重要な役割を果たしている。俺は、彼女の演技力はアステアとの諸作品の中で磨かれたものとばかり思っていたのだが、どうやらそれは間違いらしく、本作での彼女はもう十分に一人前の女優さんでした。