有頂天時代

1936年作品
監督 ジョージ・スティーヴンス 出演 フレッド・アステアジンジャー・ロジャース
(あらすじ)
ラッキー・ガーネット(フレッド・アステア)は、ダンサー稼業から足を洗い、婚約者のマーガレットと結婚しようとするが、一座の仲間に邪魔をされて結婚式に大遅刻。怒り心頭の彼女の父親に許してもらうため、再びダンサーとして一旗揚げようとニューヨークにやってくるが、彼はそこでダンス教室の教師をやっているペニー(ジンジャー・ロジャース)と出会う….


フレッド・アステアジンジャー・ロジャース・コンビの主演第5作目。

アステア&ロジャースといえば、監督はマーク・サンドリッチだとばかり思っていたが、何故か本作の監督は後の名匠ジョージ・スティーヴンス。まあ、そのせいもあってか、ラッキーがペニーの後を付けてダンス教室にやって来てから彼女と踊り出すまでの間における流れるような演出は実にお見事であり、もうこれだけで本作の魅力に惹き込まれてしまう。

エドワード・エヴェレット・ホートンの代わりにコメディリリーフを任せられたヴィクター・ムーアと、「トップ・ハット(1935年)」にも出演していたヘレン・ブロデリックによるお笑いコンビも大変に面白く、ストーリー自体に少々ヒネリが足りないのが残念ではあるが、全体としてはとても楽しいコメディ作品に仕上がっている。

一方、肝心のミュージカル部分のほうも一切手抜きは無しであり、ジェローム・カーンによる親しみやすい楽曲をバックにアステア&ロジャースが華麗なダンスを披露してくれている。また、顔を黒塗りにしたアステアがソロで踊る“Bojangles of Harlem”は、あの伝説的な黒人タップダンサーであるビル・ロビンソンに捧げられたものであり、本作の最大の見せ場となっている。

ということで、今回、改めて調べてみたところ、RKO時代のアステア&ロジャース・コンビの主演作品は全部で8作品あり、そのうちマーク・サンドリッチが監督しているのは5作品。そして、残りの3作品をウィリアム・A.サイター(「ロバータ(1935年)」)、ジョージ・スティーヴンス(本作)、ヘンリー・C.ポッター(「カッスル夫妻(1939年)」)の3人が担当している訳であるが、本作の出来の良さから考えると、ジョージ・スティーヴンスにもっと監督させれば良かったのにと思ってしまいます。