踊る騎士

1937年作品
監督 ジョージ・スティーヴンス 出演 フレッド・アステアジョーン・フォンテイン
(あらすじ)
イギリスのトトニー城では、召使い達も含め、城主であるマシュモートン侯爵の一人娘アリス(ジョーン・フォンテイン)が誰と結婚するのかという話題でもちきり。そんなある日、スイスで知り合ったアメリカ人に会うためにロンドンに出掛けた彼女は、偶然、アメリカから旅行で訪れていた有名なダンサーのジェリー・ホリデイ(フレッド・アステア)と出会い、お互いに好意を抱くように….


ジンジャー・ロジャースとのコンビで人気絶頂だった頃のフレッド・アステアが、ジョーン・フォンテインを相手役に起用した作品。

スクリーン・デビューしてまだ間がない頃のジョーン・フォンテインの美しさは目映いばかりであり、個人的には間違いなく本作の最大の見どころの一つなのだが、残念ながら歌やダンスはまるでダメ。そのせいで、本作のヒロインであるにも関わらず、クレジット上の順位は4番目とやや低い位置に止まっている。

そんな彼女に代わってクレジットの2、3番目を独占しているのが、有名な夫婦漫才コンビ(?)であるジョージ・バーンズグレイシー・アレンのお二人。実物を見るのはおそらく今回が初めてであろうが、後者のボケぶりはなかなかの破壊力であり、夫婦そろってアステアと一緒にコミカルなダンスまで披露してくれる。

しかし、イギリスの古城を舞台にしたラブストーリーには少々“場違い”な印象が強く、素直に面白がってはいられない。トトニー城の召使いの間では、アリスの結婚相手をネタにした賭が行われており、これを巡るドタバタで結構笑わせてもらえるのだから、ストーリー的にはこのコンビの出番を大幅に削ってしまった方が良かったような気がする。

一方、ソロでの出番が多くなったアステアはというと、勿論、こちらは全く問題無しであり、ロンドンの街中や古城の庭園といったちょっぴり珍しい場所で華麗なステップを披露してくれている。ちなみに、ロンドンの街中でのシーンで画面が変に白っぽくなるのは、“霧のロンドン”ならぬ、自動車の排ガスを表現しているのかしら。

ということで、名匠ジョージ・スティーヴンスがアステアとコンビを組むのは、「有頂天時代(1936年)」に続き、これが二作目だと思うが、正直、本作はミュージカルにするよりも普通のスクリューボール・コメディにしてしまった方がずっと面白かったんじゃないのかなあ。「スミス都へ行く(1939年)」にも子役で出演していたハリー・ワトソンの達者な演技も、素晴らしかったと思います。