イタリア旅行

1953年作品
監督 ロベルト・ロッセリーニ 出演 イングリッド・バーグマン、ジョージ・サンダース
(あらすじ)
亡くなった伯父が遺したナポリの別荘を処分するため、キャサリンイングリッド・バーグマン)とアレックス(ジョージ・サンダース)の夫婦は英国からイタリアへとやって来る。別荘の買い手が見つかるまでそこに滞在することになるが、結婚して8年目で倦怠期を迎えている彼女等にとって顔を突き合わせながら過ごす日々は苦痛の連続であり、二人の結婚生活は次第に危機的な状況に….


イングリッド・バーグマンロッセリーニと組んだ作品。

開始早々、この二人の冷えきった夫婦生活の有り様が見事に描写されており、見ている方のテンションも一気に急降下。途中、キャサリンナポリ周辺の美術館や遺跡を観光して回るシーンなんかも出てくるのだが、そのあまりに寂しそうなお姿を見ていると、「旅情(1955年)」でキャサリン・ヘップバーンが演じていたオールドミスの方がずーっと幸せに思えてしまう。

終盤になって遂にアレックスが離婚話を切り出すものの、その後、二人で出掛けたポンペイ遺跡の発掘現場で起きたある出来事がきっかけとなって二人は仲直り。このへんの展開がちょっと唐突過ぎるため見ていて少々戸惑ってしまうのだが、作品の前半で、アレックスが他の女性と談笑している様子をキャサリンが気にしたり、逆に、彼女の語る今は亡き恋人との思い出話にアレックスが嫉妬したりするシーンなんかもちゃんと描かれている訳で、まあ、お互い意地を張り合っていただけなんだろうね。

本作はゴダールによってヌーヴェル・ヴァーグの先駆的作品と評価されているらしいのだが、確かに後の「勝手にしやがれ(1959年)」なんかに通じる雰囲気を持っており、その甘っちょろい感傷を拒絶した乾いた語り口は、ゴダールヌーヴェル・ヴァーグがいま一つピンとこない俺の目から見てもなかなか魅力的。ハードボイルド・タッチの恋愛映画ってところかなあ。

公開当時38歳のバーグマンはさすがに歳をとったなあという印象は否めないものの、主演女優としての貫禄は十分。セリフは全編イタリア語なんだけど、Wikipediaによると彼女は英語やスウェーデン語だけでなく、イタリア語、ドイツ語、フランス語にも堪能だったらしい。

ということで、好き嫌いから言えば「旅情」の方がずーっと好きではあるが、相手役のジョージ・サンダースの演技も印象的であり、決して見て後悔するような作品ではない。字幕が悪いせいか、ラストの和解のシーンでキャサリンの方が一方的に謝っているように見えるところが気になるが、実際のところはどうなんでしょう?