気儘時代

1938年作品
監督 マーク・サンドリッチ 出演 フレッド・アステアジンジャー・ロジャース
(あらすじ)
歌手のアマンダ(ジンジャー・ロジャース)と婚約中である弁護士のスティーヴは、彼女の気まぐれによってなかなか結婚話がうまく進まず、この頃ちょっとノイローゼ気味。止む無く、親友で精神科医のトニー(フレッド・アステア)に相談し、彼女の精神分析をしてもらうことになったが….


アステア&ロジャース・コンビによる主演第7作目。

この頃のハリウッド作品には精神分析をネタにしたコメディが少なくないが、本作もそんな中の一本。珍しく精神科医に扮したアステアにより、ロジャース扮するアマンダが笑気ガスを嗅がされたり、催眠術をかけられたりと散々な目に合されるっていうあたりが、本作の笑いどころになっている。

DVDに収められていた作品データによると、この笑気ガスを嗅がされたアマンダが街中で大暴れするシーンはロジャース自身の要望により追加されたシーンらしいが、後に出てくる催眠術のエピソードと内容的にカブってしまい、作品全体の構成からいうとちょっと蛇足の感が無きにしもあらず。ただし、前者のシーンのほうが面白いのも事実であり、「少佐と少女(1942年)」や「モンキー・ビジネス(1952年)」における彼女の演技の原型を見ることができる。

お二人のダンス・シーンは相変わらず見事なものであるが、特に、アマンダの夢の中で二人が踊るシーンは、スローモーションで撮られているのにもかかわらず、細かなミスとかがまったく見当たらないという程の凄まじさ。まあ、こういったシーンを採用すること自体、彼等の自信の現れでもあるのだろう。

一方、弁護士のスティーヴに扮するラルフ・ベラミーであるが、これがどう見ても弁護士には見えないタダの木偶の坊。まあ、アステアの精神科医も“らしくない”という点では五分五分なんだけど、ベラミーの方は踊る訳でも歌う訳でもないのに、なんでこんなパッとしない俳優をもってきたのか理解に苦しむ。

ということで、本作を見て、「コンチネンタル(1934年)」や「トップ・ハット(1935年)」に出演していた例のコメディ・トリオの素晴らしさを改めて思い知らされた次第。次は、そのうちエドワード・エヴァレット・ホートンとエリック・ブローアの二人が共演している「踊らん哉(1937年)」を見てみようと思います。