男の叫び

1953年作品
監督 ウィリアム・A.ウェルマン 出演 ジョン・ウェイン、ロイド・ノーラン
(あらすじ)
1944年の冬、米軍の輸送機コルセアの機長ドゥーリイ(ジョン・ウェイン)は、グリーンランドへ物資を空輸する途中、悪天候のために何処とも知れない山奥の氷結した湖の上に不時着してしまう。遭難の連絡を受けたフュラー大佐は、直ちにスタッツ(ロイド・ノーラン)、ムーン等のベテランパイロットに召集をかけ、コルセア機の行方を捜させるものの、不時着地点に関する手掛かりは少なく、捜索は困難を極める….


ウィリアム・A.ウェルマンが初めてジョン・ウェインを主演に迎えた作品。

遭難したコルセア機にはドゥーリイの他に4人の乗組員が搭乗しており、飢えや寒さと闘いながら救助を待つ彼等の姿と、一方、空から必死になって彼等の行方を捜すパイロット達の活躍という二つの視点から本作のストーリーは成り立っている。

ドゥーリイを含め、登場するパイロットの皆さんは、今でこそ戦時中ということで軍務に就いているものの、元々はそれぞれが民間機で活躍していた“ヒコーキ野郎”の仲間たちという間柄のようであり、そんな彼等の(“戦友”というのとはまた一味違った)美しき男の友情を描くというのが本作の最大のテーマになっている。

普通に考えれば、救助されるより、救助する側の方がカッコ良いと思うのだが、本作の主演であるジョン・ウェインは救助される側の方にまわってしまったため、まあ、絶望に陥りそうになる仲間たちを優しく、そして時には厳しく叱咤激励してはいるんだけど、やはり見せ場はそれほど多くない。

一方の救助する側の方も、いつも飛行機の上から下界を見下ろしているばかりという印象であり、画的にいっても相当に変化に乏しい。主演のお二人以外にも、アンディ・ディヴァイン(=「駅馬車(1939年)」の御者!)、ハリー・ケリーJr.といった西部劇で良くお見かけする俳優さん達を取り揃えているにもかかわらず、彼等のアクションシーンが全然見られないのは大変残念である。

ということで、本作も、先日拝見した「戦場(1949年)」と同様、もう真面目すぎる程に真面目な作品であり、ウェルマン監督の「中共脱出(1955年)」における“転向”の謎は依然として解けないまんま。いや、ひょっとすると、この時期の彼は何らかの理由によって西部劇の如き能天気な娯楽作品を撮れなくなっていたのかもしれず、むしろ、この過剰な真面目さの中にこそ“転向”の秘密が隠されているのかも知れません!