ローマでアモーレ

2012年作品
監督 ウディ・アレン 出演 ウディ・アレンアレック・ボールドウィン
(あらすじ)
イタリア旅行をしていた娘が旅先で知り合った男性と結婚することになり、アメリカ人のジェリー(ウディ・アレン)は妻のフィリスを伴ってローマを訪れることになる。彼は長年携わってきたオペラの演出を引退したばかりだったが、娘の婚約者の父親である葬儀屋のジャンカルロがシャワーを浴びながら歌う声を聴いて吃驚仰天。彼をプロ歌手としてデビューさせようと思い立つ….


御高齢にもかかわらず(?)精力的に新作を発表し続けるウディ・アレンが「ミッドナイト・イン・パリ(2011年)」の翌年に発表した作品。

“あらすじ”で紹介したものを含めて4つのエピソードが並列的に描かれているのだが、場所が同じローマであるということ以外に共通点は見当たらず、各エピソードは最後まで互いに交差することなく、それぞれ別々のフィナーレを迎えることになる。

まあ、あえて共通点を探すとすれば、各エピソードとも“リアリティ”より“可笑しさ”を優先させているところであり、それが最も顕著なのが、ロベルト・ベニーニ演じる冴えない中年男のレオポルドがある日突然マスコミの注目を集めるというエピソード。でも、これって筒井康隆の「おれに関する噂」のパクリだよね。

また、存在感たっぷりに登場したアメリカ人の有名建築家のジョン(アレック・ボールドウィン)が、いつの間にか、小悪魔的な女性モニカ(エレン・ペイジ)に心を奪われそうになるイタリア人青年ジャックの“理性の声”になって彼の危機を救うエピソードもなかなか面白かった。

一方、多彩な出演者の中で特に印象深かったのは、田舎からローマに出てきた新婚夫婦の災難を描くエピソードに娼婦役で出演していたペネロペ・クルスであり、年齢や過去の実績からしても敬遠したくなるような役柄を楽しそうに飄々と演じているのが好印象だった。

ということで、ウディ・アレンの監督作品のうち、彼自身が主役を務めている作品はどちらかというと苦手だったのだが、本作は最後まで楽しく見終えることが出来た。まあ、彼の出番が比較的少なかったこともあるが、それ以上に彼が俳優として枯れてきたせいなのかもしれません。