恋のロンドン狂騒曲

2010年作品
監督 ウディ・アレン 出演 ナオミ・ワッツジョシュ・ブローリン
(あらすじ)
40年間連れ添った夫アルフィに逃げられてしまったヘレナは、自殺未遂騒ぎの末、インチキ占い師の熱心な信者になってしまう。彼女を心配する一人娘のサリー(ナオミ・ワッツ)は、それで気が休まるのならと母の占い師通いを黙認していたが、そんな彼女も売れない小説家の夫ロイ(ジョシュ・ブローリン)に愛想を尽かす寸前であり、生活費を得るために働き始めた画廊のオーナーに一目惚れ….


ウディ・アレンがロンドンを舞台に撮った恋愛コメディ・ドラマ。

アルフィ&ヘレナにロイ&サリーという二組の夫婦が登場し、その4人全員が“より良い人生を送るため”に新たなパートナーとの生活に一歩踏み出そうとするのだが、結果は惨敗。唯一、ヘレナと彼女をジャンヌ・ダルクの生まれ変わりと信じるオカルト・マニアのジョナサンのコンビだけは上手く行きそうな雰囲気であるが、あの後、彼等がインチキ占い師の餌食になることはまず間違いのないところ。

なかでも最も悲惨なのは、勤務先のボスであるグレッグに一目惚れしてしまったサリーであり、既婚者同士ということで、互いに惹かれ合いながらも、なかなか自分の気持ちを言い出せないでいるうちに、グレッグは別の女性を選んでしまう。後悔した彼女は、ロイと離婚した後、不倫でも良いからグレッグの気持ちに応えるべきだったと彼の前で告白するのだが、何と、グレッグは最初から彼女のことを仕事上のパートナーとしてしか考えておらず、結局、全ては彼女の妄想であったことが判明してしまう。

まあ、なかなかシニカルなストーリーではあるが、そもそも本作のテーマは“人生は空騒ぎ、意味などない(byシェークスピア)”だそうであり、そこに何か教訓めいたものが存在する訳ではない。本作の登場人物たちの“努力”もひょっとすると次は報われるかも知れず、観客は、ウディ・アレンが垣間見せてくれる人間の弱さや愚かしさをそのまま笑って受け入れれば良いのだろう。

ということで、主演の二人以外にもアンソニー・ホプキンスアントニオ・バンデラスといったところが顔を揃えており、小品ながらなかなか楽しい作品に仕上げられている。以前から薄々感じていたことではあるが、ウディ・アレンの作品のうち、彼が俳優として出演していない作品との相性は決して悪くないようであり、今後もそんな方向で彼の作品を楽しみたいと思います。