ギター弾きの恋

1999年作品
監督 ウディ・アレン 出演 ショーン・ペンサマンサ・モートン
(あらすじ)
ジャズ・ギタリストのエメット・レイ(ショーン・ペン)は、“世界で2番目”を自称するとおりギターの腕前は超一流であるが、私生活では、酒浸りの上にポン引きをしたり、ケチな盗癖があったりする自堕落なダメ男。ある日、友人と一緒に二人連れの女性をナンパするが、彼の割り当てになったのは、子供の頃の病気のせいで口が利けなくなったハッティ(サマンサ・モートン)という娘だった….


ウディ・アレンのコメディ映画を久しぶりに鑑賞。

冒頭、ウディ・アレン自身が登場し、“伝説のジャズ・ギタリスト”エメット・レイの思い出話しなんかを始めるもんで、てっきり実在のミュージシャンの伝記映画だと思って見ていたのだが、見終わってから調べてみたところ、これが大嘘。エメットもハッティも完全に架空の人物だった。

まあ、いいかげんな男が決して美人ではない障害を持った少女に恋心を抱くという設定に少々の無理がある故、それに説得力を持たせるためのテクニック(=“事実なんだから仕方ない。”)としてこのドキュメンタリイ風の演出を採用したのだろうが、お話し自体にも様々な工夫が凝らされているため、騙されたと判ってもそう腹は立たない。

エメットの正体は、ハッタリででも“世界一”を名乗ることが出来ないような小心者であり、そんな彼が、文句ひとつ言わずに自分の後をどこまでも着いてくる娘に次第に惹かれていくというストーリーは、個人的にはそう苦労せずに受け入れることが出来た。

このハッティという娘を演じているサマンサ・モートンは、公開当時22歳。「ペーパー・ムーン(1974年)」でテイタム・オニールの演じたアディをそのまま大人にしたような容貌はとても可愛らしいのだが、その同じ人が、3年後には「イン・アメリカ/三つの小さな願いごと(2002年)」のあのお母さん役を演じているのだから、おそらくなかなか大した女優さんなんだろう。

ということで、実はジャズ・ギターというのはこれまであまり聞いたことが無かったのだが、作中で流れる生ギターの音色はとても心地よい。機会があったら、今度、エメットが気絶するほど尊敬していたというジャンゴ・ラインハルトの演奏でも聴いてみようかと思います。