愛のアルバム

1941年作品
監督 ジョージ・スティーヴンス 出演 ケイリー・グラントアイリーン・ダン
(あらすじ)
レコード店で働くジュリー(アイリーン・ダン)は新聞記者のロジャー(ケイリー・グラント)に見初められ、二人は付き合うようになる。彼の自由気ままな暮らしぶりに少々の不安はあったものの、彼が特派員として日本に派遣されることが決まったのを契機に二人は結婚。彼の子を身ごもった彼女も数ヶ月遅れで日本にやってくるが、そこで運悪く大地震に遭遇してしまい、家屋の下敷きになった彼女は流産してしまう….


ジョージ・スティーヴンスが「女性No.1(1942年)」の前年に公開したホームドラマ

帰国した彼等は養子を貰うことになり、“2歳の男の子”を希望するが、やって来たのは生後間もない女の子。その後、子育て経験の全く無い二人が育児に悪戦苦闘する様子がコミカルに描かれているのだが、このトリナという女の子の印象が最初からあまりにも儚げである故、“きっと途中で○んじゃうんだろうなあ”と思いながら見ていたら、案の定、そういった展開へ。

邦題の“アルバム”というのは、写真集ではなくレコード集のことであり、冒頭、離婚を決意したジュリーが思い出の曲を聴きながら、一曲ごとに過去の出来事を回想するという形でストーリーが進んでいく。

終盤、アルバムの全てのレコードを聴き終わった時点で再び現在のお話しに戻り、ここで起きたある出来事によって二人の破局の危機は回避され、急転直下、ハッピーエンドで終わるのだが、この結末が(悪い意味で)ちょっとした驚愕もの。いくら“子は鎹”といっても、悪い冗談としか思えないような内容であり、そこまでの“そこそこの佳品”といった本作のイメージを台無しにしてしまっている。

ケイリー・グラントアイリーン・ダンは「新婚道中記(1936年)」でも共演していたコンビであり、まあ、安心して見ていられる。俺はアイリーン・ダンの長〜いお顔があまり好きではないのだが、同じジョージ・スティーヴンスによる「ママの想い出(1948年)」同様、こういった母親役であればなんとか我慢出来る。

ということで、本作が公開されたのは正に日米開戦直前のことだった訳であるが、それにもかかわらず、作中で描かれる日本の様子からは悪意の欠片も感じ取ることが出来ない。真珠湾攻撃以前における平均的アメリカ人の日本観って、いったいどんなものだったのでしょうか。