ショウ・ボート

1936年作品
監督 ジェームズ・ホエール 出演 アイリーン・ダンアラン・ジョーンズ
(あらすじ)
陽気なアンディ船長率いるコットン・ブロッサム号は、ミシシッピー川沿岸の街々を巡業して回るショウ・ボート。ある日、花形女優のジュリーに黒人の血が混じっていることが発覚し、彼女は船を下りなければならなくなるが、その代役として船長が抜擢したのが初々しい愛娘のマグノリアアイリーン・ダン)。彼女は、ハンサムなゲイロードアラン・ジョーンズ)と組んで観客の大喝采を浴びるが….


1927年に初演されたブロードウェイ・ミュージカルの2度目(?)の映画化。

Wikipediaによると1929年に映画化された作品はミュージカル映画ではなかったらしいのだが、一方のIMDbの情報によるとサイレント映画として製作された本編の前に17分間のミュージカルシーンが付け加えられていたようであり、そこでは本作にも出演しているヘレン・モーガンがジュリー役を務めていたらしい。

さて、そんな中途半端な作品に満足できなかったユニバーサル映画が、アンディ船長役のチャールズ・ウィニンジャー、ジュリー役のヘレン・モーガン、黒人ジョー役のポール・ロブスンといったブロードウェイ・ミュージカルの出演者を大挙起用して製作したのがこの作品であり、今から80年に作られたとは思えないくらいの本格的なミュージカル映画に仕上げられている。

特に、ポール・ロブスンの伝説的な低音を聴くことが出来る「Ol’ Man River」からヘレン・モーガンの“Can’t Help Lovin’ That Man”(=先日の「プリンス・オブ・ブロードウェイ」でも取り上げられていた。)へと続く贅沢な選曲はまさに感涙ものであり、同時に、その直後に訪れるジュリーの宿命的な出来事の持つ悲劇性をひときわ高める役割も果たしている。

それから先は、ショービジネス界に身を置く親子3代の感動的ストーリーへと物語の中心は移っていくのだが、再起を賭けた舞台上で思わず絶句してしまうマグノリアに対し、たまたま居合わせた父親のアンディ船長が客席から優しくエールを送るシーンは何度見ても飽きない名シーン。1951年版に出演していたジョー・E.ブラウンのオリジナルだとばかり思っていた“ハッッッピ・ニューイヤー”のルーツを確認できたのも嬉しかった。

ということで、見終わってからの感想は大満足、と言いたいところだが、本作の最大の問題は主演のアイリーン・ダンであり、女優の高畑淳子みたいなゴツい顔つきは何度見ても好きになれないなあ。公開当時38歳という年齢からしても、本作のマグノリア役には全く相応しくないと思います。