グリード

1924年作品
監督 エリッヒ・フォン・シュトロハイム 出演 ギブソン・ゴーランド、ザス・ピッツ
(あらすじ)
粗野な炭坑夫のマック(ギブソン・ゴーランド)は、母親の勧めで流しの歯医者に弟子入りし、その1年後、サンフランシスコで歯科医院を開業する。早速、友人のマーカスから彼の恋人トリナ(ザス・ピッツ)を患者として紹介してもらうが、何度か治療するうちにすっかり彼女の虜になってしまったマックは、そのことをマーカスに告白。幸い、マーカスは潔く身を引いてくれたのだが….


エリッヒ・フォン・シュトロハイムの監督としての代表作。

その後、マーカスの手助けもあってマックとトリナは順調に交際を続け、めでたく結婚の運びとなるのだが、その直前、トリナが戯れに購入した富くじが見事当選し、5000ドルの大金が転がりこんでくるあたりから運命の歯車が狂い始める。

最初にショックを受けたのは、それまで男気のあるところを見せていたマーカスであり、トリナをマックに譲らなければ彼女の5000ドルも手に入れることが出来たのに、と後悔することしきり。二人への憎しみ(=嫉妬)のあまり、マックが歯科医師としての正式な免許を持っていないことを歯科医師会に密告し、彼の歯科医院を廃院に追い込む。

一方のトリナも5000ドルの金貨を溺愛するあまり、小銭の支払いも渋るような守銭奴へと変貌してしまい、後半は彼女のグリード(=貪欲)を中心にストーリーは展開していくのだが、事前学習によると、本作は当初上映時間9時間を越える超大作として企画されたそうであり、テーマも貪欲だけでなく、傲慢、嫉妬、憤怒、怠惰、暴食それに色欲を含む7つの大罪の全てが含まれていたらしい。

その後2時間未満にまで切り刻まれてしまった本作にもその痕跡は残っており、炭坑夫時代のマックがちょっかいを出した同僚を放り投げたり(=憤怒)、恋仲になる前のマックがエーテルで昏睡させたトリナにキスをしたり(=色欲)と衝撃的なシーンも少なくないのだが、上映時間の制約からか、こういったエピソードのすべてがストーリーに活かされているとは言い難い点が残念だった。

ということで、同じサイレント映画でもエルンスト・ルビッチの洗練されたタッチとはかけ離れた演出なのだが、その無骨でグロテスクな描写が異様な迫力を伴っているのも否定し難い事実であり、とりあえず、次は「愚なる妻(1921年)」を見てみようと思います。