女と女と女たち

1967年作品
監督 ヴィットリオ・デ・シーカ 出演 シャーリー・マクレーンピーター・セラーズ
(あらすじ)
エッフェル塔の見える通りを、葬列の一団が静々と進んで行く。亡夫の遺体を載せた霊柩車のすぐ後を歩いていく未亡人のポーレット(シャーリー・マクレーン)は、悲しみに涙が止まらない様子であったが、そんな彼女を支えるように寄り添う友人のジャン(ピーター・セラーズ)は、場所柄もわきまえず、彼女を口説き始める。最初は乗り気でなかったポーレットも、次第に彼の話に興味を示すようになり….


シャーリー・マクレーンの主演による7話からなるオムニバス作品。

舞台はパリであるが、内容はイタリア映画に良くあるような艶笑小話であり、すべてのエピソードでヒロインを務めるシャーリー・マクレーンが、7パターンの“可愛い女”を演じて見せてくれる。

まあ、あくまでも彼女らしく、あまり下品な表現はないのだが、肌の露出度の高いお色気シーンも何度か登場し、そのぽっちゃりとした丸顔からはちょっと想像しにくい、スリムな肢体を拝ませていただけるのは、ファンとして嬉しい限り。ボブ・フォッシーと組んだ「スイート・チャリティ(1968年)」は、本作の翌年の公開だったんだなあ。

共演者もなかなか豪華であり、特にピーター・セラーズアラン・アーキンといった個性的な俳優が顔を見せてくれるのも本作の魅力の一つなのだが、正直、各エピソードともヒネリが足りず、ストーリー的に記憶に残るようなものがあまり見当たらないのが残念なところ。

そんな中、夫(フィリップ・ノワレ)が依頼した私立探偵(マイケル・ケイン)のことを、自分に好意を抱いている男性と勘違いしてしまうという最終話が抜群に面白く、皮肉な結末にもかかわらず、ロマンチックな雰囲気を損なっていないところが誠に好ましい。アイデアは、キャロル・リードの佳作「フォロー・ミー(1972年)」と共通しており、ひょっとしたら5年前に公開された本作が、その作品にインスピレーションを与えたのかもしれない。

ということで、デ・シーカの作品としては相当あっさりした感じに仕上げられた印象があるが、いずれにしても、「ふたりの女(1960年)」と「ひまわり(1970年)」の間に、こんな能天気な作品を撮っているあたりはさすが“巨匠”であり、その懐の深さには改めて感心させられてしまいます。