地下鉄のザジ

1960年作品
監督 ルイ・マル 出演 カトリーヌ・ドモンジョ、フィリップ・ノワレ
(あらすじ)
母親に連れられてパリへやって来たザジ(カトリーヌ・ドモンジョ)。しかし、母親の目的は若い恋人との逢瀬を楽しむことであり、幼いザジを伯父のガブリエル(フィリップ・ノワレ)に預けると、恋人と一緒にサッサとお泊まりデートに出掛けてしまう。残されたザジがパリで一番楽しみにしていたのは地下鉄に乗ることだったのだが、運悪くストライキの真っ最中のため、地下鉄は動いていない….


ルイ・マル初のカラー作品は、少女を主人公に起用したスラップスティック・コメディ。

田舎から出てきた10歳の元気な女の子がパリで過ごす3日間の様子を生き生きと描いており、少々色褪せたような淡く美しいカラー映像がとても魅力的な作品なのだが、興味が持続するのはせいぜい始まってから30分間くらい。

主人公のザジと彼女が街中で出会うちょっと風変わりな人々とのエピソードがメインテーマになっているため、屋外での撮影が多く、映像からは、今よりも相当おおらかであったと思われる当時のパリの自由で開放的な雰囲気が良く伝わってくるのだが、各エピソードを繋ぐような明確なストーリーが見当たらないのが困りもの。そのせいでいまひとつ映画にのめり込むことが出来ないため、見ているそばから各エピソードに関する記憶がボロボロと抜け落ちていってしまう。

もちろん、そのあたりの事情はルイ・マル自身もよくわきまえており、コマ落としやスローモーション等、モノクロのサイレント映画みたいな表現方法を取り入れて映像に変化を持たせようと努力しているのだが、それにしてもこの内容で上映時間93分は長過ぎであり、アキ・カウリスマキ並に45分程度にすべきだったと思う。

ちなみに、ザジを演じたカトリーヌ・ドモンジョ(=本名?)は本作のヒットで大人気となり、翌年にはジャン=リュック・ゴダールの「女は女である(1961年)」に同じザジ役として出演しているらしい。

ということで、今でもハッキリ覚えているのは、ラスト近くでようやく地下鉄に乗る夢が叶ったにもかかわらず、疲れて眠っていたザジはそのことを全く覚えていなかった、という落語のオチみたいなエピソード。やはりボケてくると何らかの意味、関連性が無いと記憶に残らないようです。