追想

1975年作品
監督 ロベール・アンリコ 出演 フィリップ・ノワレロミー・シュナイダー
(あらすじ)
ドイツ占領下のフランス。負傷した政治犯等の治療を行ったために当局からマークされてしまった外科医のジュリアン(フィリップ・ノワレ)は、妻のクララ(ロミー・シュナイダー)や娘のフロランスが巻き添えになるのを恐れ、別荘として利用していた郊外の古城に二人を避難させる。数日後、仕事が一段落した彼は、妻子に会うために別荘のある村を訪ねるが、そこで彼が目にしたものは….


長年見たかったロベール・アンリコ監督の名作。

いろんなところで話題になった作品のため、大まかな設定と衝撃的なラストに関しては見る前から余計な知識がインプットされてしまっていたのだが、そこは名作ということで、ある程度ストーリー展開が読めてしまっても大きな問題にはならず、最後まで大変面白く見続けることが出来た。

主人公が家族と共に楽しい時を過ごした古城が復讐劇の舞台になっているのだが、映像的な面以外でもこの設定が見事な効果を上げており、複雑な城の構造を完全に把握しているジュリアンは、それを利用して妻子を虐殺したドイツ兵を次々に殺害していく。また、そこには幸せだった家庭生活の思い出がいたるところに染み付いている訳であり、復讐の鬼と化したジュリアンが凶行の合間についつい“追想”に浸ってしまうというストーリーにも上手くマッチしていた。

まあ、その追想シーンに現れるのが幸せな思い出ばかりというのは、勿論、凄惨な現在との対比を際立たせるためのロベール・アンリコの作戦なのだが、そこでの妻クララの良妻賢母ぶりはあまりにも強烈であり、分かってはいてもどうしても心を揺さぶられてしまう。正直、夫の目の前であんなに幸せそうに笑う女性というのは、一種の衝撃であった。

そのクララを演じているのは、公開当時37歳のロミー・シュナイダーであり、その落ち着いた美しさには特筆すべきものがある。一方、主演のフィリップ・ノワレも流石の名演技であり、その太った体で、汗をかき、息を切らせながらドイツ兵を追い詰めていく様子は、なかなかリアリティがあった。

ということで、評判どおりの面白い作品であり、これ一本ですっかりロミー・シュナイダーのファンになってしまった。これまであまり意識したことのない女優さんなので、どんな作品に出演しているのか良く分からないのだが、何か別の作品も見てみたいと思います。