将軍たちの夜

1966年作品
監督 アナトール・リトヴァク 出演 ピーター・オトゥールオマー・シャリフ
(あらすじ)
ドイツ占領下にある1942年のワルシャワ。アパートの一室で売春婦が惨殺される事件が発生し、犯人が将軍の軍服を身に着けていたという目撃証言から、情報部のグラウ少佐(オマー・シャリフ)が事件の捜査に当たることになる。彼は、事件当夜のアリバイがないガプラー、カーレンベルクそしてタンツ(ピーター・オトゥール)の3人に目を付けるが、相手が大物だけに直接会って話を聞くことすらままならない….


アナトール・リトヴァク監督による第二次世界大戦を舞台にした殺人ミステリイ。

あるパーティ会場でようやくこの3人をつかまえたグラウ少佐は、(やや得意げに)彼等が殺人事件の容疑者であると告げることに成功するが、その翌日、彼はあっさりとパリ勤務に“ご栄転”させられてしまい、捜査はあえなく頓挫してしまう。

まあ、このグラウ少佐自身も相当ユニークな人物であり、戦争で多くの人命が失われている時期に、たかが(?)ポーランド人売春婦の殺人事件に我が身の保身も顧みない異常な執着を示し、パリでの第2の殺人事件の捜査では、その過程で明らかになったヒトラー暗殺計画(=例のヴァルキューレ作戦)の方にはほとんど興味を示さずに殺人事件の捜査を続行する。

このへんの彼の内面に関する説明は特に無いようなのだが、俺の勝手な想像からすれば、おそらく彼は戦争やクーデターといった正邪の判断が困難な問題はとりあえず棚上げにしてしまい、善悪が比較的ハッキリしている単純な殺人事件の捜査に没頭することによって自らの正気を保っていたのではないだろうか。

そして、生真面目な性格からそんなごまかしが出来ないままに狂気の世界へと足を踏み入れてしまうのが、英雄と呼ばれるタンツ将軍であり、まあ、ピーター・オトゥールが演じているという時点で真犯人が彼であることは観客にモロバレであるものの、「アラビアのロレンス(1962年)」の4年後という彼の演技は流石に魅力十分であり、レジスタンスを捕まえるためにワルシャワ市内で戦車をぶっ放すシーンは衝撃的であった。

ということで、ミステリイとしての魅力は弱いものの、ドナルド・プレザンスフィリップ・ノワレといった強力な脇役陣の他にクリストファー・プラマーもチラッと顔を見せてくれており、1942年から1965年までの20数年間に及ぶ人間ドラマとして見れば、アナトール・リトヴァク(=公開当時66歳)のベテランの味を堪能することが出来ます。