タロットカード殺人事件

2006年作品
監督 ウディ・アレン 出演 スカーレット・ヨハンソンヒュー・ジャックマン
(あらすじ)
ブルックリン生まれのサンドラ(スカーレット・ヨハンソン)は、ジャーナリスト志望の女子大生。滞在先のロンドンでマジックショーを見に行った彼女は、老マジシャンのシドに言われるまま“魔法の箱”に入るが、その中で急死した敏腕新聞記者ストロンベルの亡霊と遭遇。彼から、ロンドンで起きている連続殺人事件の真犯人は青年貴族のピーター・ライモン(ヒュー・ジャックマン)だと告げられる….


ウディ・アレンが、「マッチポイント(2005年)」に続いてスカーレット・ヨハンソンを主演に起用した第2作目。

トロンベルの亡霊から一大スクープだとはっぱをかけられたサンドラは、老マジシャンのシドをパートナーにして容疑者のピーター・ライモンに接近するのだが、このピーター君、ハンサムな上に親切で礼儀正しい好青年であり、いつしか二人は相思相愛の仲になってしまう。

まあ、このあたりはラブコメの王道的な“よくある話”なのだが、ここで老マジシャンのシドに扮しているのがウディ・アレン自身であり、彼とサンドラ役のスカーレット・ヨハンソンによるテンポの良い掛け合いが本作の見どころ。

前にも書いたことがあるかもしれないが、俺はウディ・アレンの演じる神経症的なキャラクターが大の苦手であり、彼が主演・監督を務める作品で面白く思ったのは(オムニバス形式ということで比較的彼の出番が少ない)「ローマでアモーレ(2012年)」くらいだったのだが、本作における彼の演技は素直に楽しむことが出来た。

その理由としては、やはり彼が演技者として枯れてきたからというのが一番であり、以前のような見ていてイライラさせられる演技はほとんど影を潜めている。また、彼の一人舞台では無く、共演者の見せ場がきちんと確保されているあたりも大変好ましく、作品としてのスケールも広がっているように思えた。

ということで、連続殺人事件をテーマにしながら、ハラハラドキドキ感が全くと言って良いほど伝わってこない作品であるが、ラブコメとしてはそれで十分。終盤、ようやく事件の真相にたどりついたシドの努力が、結局、何の役にも立たないまま終わってしまうという皮肉なオチもなかなか面白かったです。