スリーパー

1973年作品
監督 ウディ・アレン 出演 ウディ・アレンダイアン・キートン
(あらすじ)
2173年の未来社会。200年前に冷凍睡眠の処置を受けた男マイルズ(ウディ・アレン)は、徹底した管理社会の転覆を企む反体制派の科学者たちの手によって無事蘇生させられるが、そこに警察が乱入してきて大騒動。たまたま駐車していた一台のバンに逃げ込んでその場を逃れた彼は、積荷の召使いロボットに成りすましたままルナ(ダイアン・キートン)という女性の家へと運ばれる….


ウディ・アレンの初期監督作品となるSFコメディ。

反体制派がマイルズに目を付けたのは、経歴や指紋が政府に登録されていない彼をスパイとして利用するためであり、このへんの理屈付けはなかなか本格SF作品っぽいのだが、いざ、警察との追いかけっこが始まると、そこから先は一気に脱力系のスラップスティック・コメディへと突き進んでいく。

反抗分子に対しては洗脳も辞さないという未来の管理社会に対する批判も読み取れない訳ではないが、一庶民にすぎないマイルズにとってみれば“住めば都”みたいなものであり、ついに警察に逮捕され、洗脳を受けてしまった彼のその後の暮らしぶりも、そう否定的には描かれていない。

一方の反体制派によるマヌケな野外生活の様子を考えてみても、このへんは、むしろ(当時のSF作品に顕著であった)ジョージ・オーウェル的な世界観に対するウディ・アレン一流の皮肉と捉えたほうが適当であり、その根底には、人間社会に対して過度の期待を抱かないという彼自身の諦念の感みたいなものがあるような気がする。

まあ、こういった思想自体は決して嫌いではないのだが、実際に出来上がった映画が面白いか否かはそれとはあまり関係はなく、残念ながら、本作で繰り広げられるナンセンスなドタバタ喜劇は、いっこうに俺の笑いのツボを刺激してくれない。公開当時ならともかく、現時点では特に目新しいといえるようなギャグも見当たらなかったように思う。

ということで、実をいうと、俺とウディ・アレン作品との相性はあまり芳しいものとはいえず、特に彼が主役を務めている映画で面白いと思ったものは、本作を含め、これまでのところ皆無の状態。ただし、決して不快感を覚えるようなことはないので、これからも時々試してみたいと思います。