キンキーブーツ

2005年作品
監督 ジュリアン・ジャロルド 出演 ジョエル・エドガートンキウェテル・イジョフォー
(あらすじ)
チャーリー・プライス(ジョエル・エドガートン)は、父親の急逝により、田舎町ノーサンプトンにある老舗靴工場の経営を引き継ぐことになるが、大量の不良在庫を抱えた工場は倒産寸前。やむなく十数人の従業員のリストラを行うが、そんなとき、偶然知り合いになったドラァグクイーンのローラ(キウェテル・イジョフォー)の話をヒントに、新たな市場の開拓に取り組むことに….


実話をモチーフにしたイギリス製のコメディ映画。

チャーリーが目を付けたのは服装倒錯の男性向けセクシーブーツの開発であり、ローラをデザイナーに迎えてミラノ・コレクション向けの商品サンプルの製作に取り掛かる。最初は半信半疑だった従業員たちも、チャーリーの真意が“もうリストラはしたくない”という一心にあること知って一致団結!

その後も一波乱あるものの、ラストはお約束どおりのハッピーエンドという展開は、まあ、いかにもベタなのだが、ベタにはベタになるだけの魅力があるということで、事実、本作もとても面白い。久しぶりにイギリス映画らしい上質なコメディ作品を堪能させていただいた。

さて、本作の最大の魅力は、何といってもキウェテル・イジョフォー扮するドラァグクイーンのローラであり、ごつい体つきの黒人男性が高いピンヒールのロングブーツを履いてステージ上を闊歩する様子は貫禄十分。我が国であれば、せいぜいお笑いタレント扱いされるのが限界だと思うが、このへんは文化の懐の深さの違いなのかもしれない。

また、派手なローラと見事なまでに対照的な靴工場の従業員たちの存在が本作の二番目の魅力であり、ノーサンプトンにだって美男美女はいくらでも存在すると思うのだが、本作には正統派の二枚目俳優や美人女優は一人も登場せず、出てくるのは垢抜けない男女ばかり。しかし、全員実に味のある俳優さんばかりであり、特に、気弱なチャーリーを支えるローレン役のサラ=ジェーン・ポッツの健気な可愛らしさは本作のヒロインにピッタリだった。

ということで、女性用のカツラを脱いだ、ローラことサイモンの寂しそうな眼差しが三番目の魅力。チャーリーの優しさに惹かれながらも、ローレンの存在を察してそっと身を引くあたりは、またしても完全なベタなのだが、ちょっぴり胸打たれるところがありました。