天国の日々

1978年作品
監督 テレンス・マリック 出演 リチャード・ギアブルック・アダムス
(あらすじ)
定職に就くことが出来ず、故郷のシカゴを捨てて放浪の旅を続けているビリー(リチャード・ギア)は、妹のリンダと恋人(=世間には妹と説明している。)のアビー(ブルック・アダムス)と一緒に、テキサスの農場で麦刈りの仕事にありつく。若き農場主のチャックは、アビーがビリーの恋人だとは知らずに彼女を愛するようになるが、彼の余命があと1年しかないことを知ったビリーは….


テレンス・マリックカンヌ国際映画祭で監督賞に輝いた作品。

ビリーは、20世紀初頭の頃、“ホーボー”と呼ばれた人々の一員であり、その日暮しの生活に嫌気が差した彼の勧めもあって、アビーはチャックからのプロポーズを受諾。他に身寄りも無いらしいチャックの所有する大農園において、チャック&アビー夫婦とビリー&リンダ兄妹の共同生活が始まる。

勿論、ビリーはアビーのことを諦めた訳ではなく、チャックが死ぬまでの間の辛抱だと考えている訳であり、チャックの目を盗んでアビーとの密会を楽しんだりもするのだが、このあたりの三角関係の描写は不自然なほど“自然”であり、(ちょっぴり鈍感な)チャックが真実に気付くまでの間、まるでエデンの園のアダムとイブの如き“天国の日々”が淡々と続いていく。

特に印象的なのはその美しい映像であり、その後のテレンス・マリック作品の方向性を決定付けたといって良いくらいの素晴らしさ。また、説明セリフを極力排しようとする方針もこの頃から見られるのだが、ストーリーは比較的シンプルであり、正直、とても取っ付きやすい。

そして、クライマックスはこの天国の日々が終わりを告げる時に訪れる訳であり、広大な麦畑が炎に包まれるシーンは今まで見たことのないような不安な迫力に満ちた地獄絵図。特に、それまでの牧歌的な美しい映像との落差が物凄く、ビリー、アビー、リンダの三人の失楽園をものの見事に表現している。

ということで、「シン・レッド・ライン(1998年)」や「ツリー・オブ・ライフ(2011年)」に比べれば、随分と“普通の映画”らしい作品であり、これならもう一度見てみようという気にもなるのだが、残念ながら、そのことは俺がテレンス・マリックを理解出来ていないことの証でもあるのでしょう。