Dr. Tと女たち

2000年作品
監督 ロバート・アルトマン 出演 リチャード・ギアヘレン・ハント
(あらすじ)
ダラスで開業している婦人科医のサリー・トラビス(リチャード・ギア)は、ハンサムな容貌と誠実な人柄が評判となり、彼のクリニックは毎日大勢の女性で大盛況。愛妻ケイトと二人の娘、さらには3人の幼い娘を連れて出戻ってきている義理の妹ペギーに囲まれて、私生活も順調と思っていたある日、突然ケイトが精神に変調をきたし、精神科の療養所に入院することになってしまう….


本日、ロバート・アルトマンの2本目は、「クッキー・フォーチュン(1999年)」の翌年に発表したコメディ映画。

ケイトの主治医の見立てによると、彼女はヘスティア・コンプレックスという病気らしく、その症状は、物質的にも精神的にも恵まれ過ぎた女性が、前向きに生きる意欲を失ってしまい、幼い少女へと退行してしまうというもの。こんな病気が本当にあるのかどうかは知らないが、まあ、夫にとっては青天の霹靂のような気分だろう。

しかし、トラビス医師の周囲にたむろする大勢の女性たちを見ていると、そんな診断もあながちデタラメではなさそうな気がしてくる。すなわち、彼の周囲では、“強い男”と“弱い女”という図式が完全に出来上がっているため、男性自身が女性の自立を望まないような状況になってしまっているのではなかろうか。

そんな中で、唯一人、パンツスタイルで颯爽と登場するのが女子プロゴルファーのブリー(ヘレン・ハント)であり、トラビスは自立した女性である彼女に興味を抱き、それは次第に愛へと変わっていく。しかし、終盤、それまでの生活の全てを投げ捨てて彼女の元へと走った彼を待っていたのは、思いも寄らなかったブリーの拒絶であり、要するに女性の自立を望まないような男は、本当の大人ではないということなんだろう。

本作でも、トラビス医師が3人の男友達と一緒に狩猟にいそしむシーンが何回か出てくるのだが、そこで描かれる彼等の姿はわんぱく小僧そのものであり、あのちょっと衝撃的(?)なラストシーンは、トラビスが本当の男として再生することを望む、監督の願いなのかもしれない。

ということで、アルトマン作品にしてはヒネリが少なく、少々物足りなさを感じないではないが、出てくる女性は皆さんセクシーで美人だし、気軽に眺めている分にはなかなか楽しい作品。「ギャンブラー(1971年)」を見て凍てついていた心が、少しだけ癒されたような気がしました。