ギャンブラー

1971年作品
監督 ロバート・アルトマン 出演 ウォーレン・ベイティジュリー・クリスティ
(あらすじ)
開拓時代末期のアメリカ。雪深い北西部の鉱山町にやってきた賭博師のジョン・マッケイブウォーレン・ベイティ)は、この町で鉱夫相手の売春宿を開くことを思いつく。経験豊富なミラー夫人(ジュリー・クリスティ)を共同経営者に迎え、彼の店は順調に大きくなっていったが、そんなところに鉱山会社から派遣されてきたという男が現れ、マッケイブの店と土地を全部買い取りたいと申し出る….


ロバート・アルトマンが「M・A・S・H(1970年)」の翌年に発表した作品。

鉱山会社の提示してきた価格は決して不満な額ではなかったものの、にわかにギャンブラーとしての血が甦ったマッケイブは、値段を吊り上げるためにとりあえずその申し出を拒否する。しかし、それを“交渉決裂”と考えてしまった鉱山会社は、彼を亡き者とするため、町に殺し屋を送り込んでくるというストーリー。

買取を申し出た鉱山会社がれっきとした株式会社だったり、蒸気機関で動く馬車(?)や市民派弁護士が登場したりと、文明社会はもうすぐそこまで来ているのだが、その一方で、交渉に応じない者は殺すという開拓時代らしい野蛮性もいまだ健在。情報量の少なかったこの頃、町に銃を持った流れ者がやってくるだけで、何ともいえない不安な雰囲気が漂い出す。

一応、西部劇と考えて良いのだろうが、演出は結構リアリズムに拘っているようであり、コメディ的な要素や説明セリフはほとんど出てこないし、1対3の決闘も決して格好良くはない。まあ、救いのない結末はアルトマン作品では珍しくないものの、本作におけるマッケイブの最期はただただ孤独で惨めなだけであり、そこには笑いも皮肉も見当たらない。

一般的には相当評価の高い作品のようであり、俺も本作が基本的に優れた作品であることを否定しようとは思わないが、少なくとも、気分が乗らない冬の日曜日に一人で鑑賞して楽しくなるような作品では全くなく、正直、心の底まで雪の冷たさが伝わってくるような気がした。

ということで、本作におけるマッケイブの心の内を代弁するかのようにレナード・コーエンの歌が数曲使われているのだが、残念ながら、俺は彼の無表情な歌声も昔からあまり得意ではなく、そんなところも本作の印象に影響しているのかもしれません。