プレタポルテ

1994年作品
監督 ロバート・アルトマン 出演 マルチェロ・マストロヤンニソフィア・ローレン
(あらすじ)
パリ・コレクションの開幕を目前に控えたある日、プレタポルテ協会長オリヴィエの元に一本の派手なネクタイが送られてくる。添えられていたメモの内容に従い、それを身に着けて空港にやってきた彼は、そこで自分と同じ柄のネクタイを締めたセルゲイ(マルチェロ・マストロヤンニ)という男に出会い、一緒に車でパリ市内へ向かうが、その途中、オリヴィエはサンドウィッチを喉に詰まらせて急死してしまう….


ロバート・アルトマンが「ショート・カッツ(1993年)」の翌年に公開した作品。

Wikipediaによると、“プレタポルテ”というのは高級既製服のことであり、パリ・コレクションは世界最大の高級既製服展示会なのだとのこと。本作は、そんなパリコレを舞台にした群像劇なのだが、アルトマン監督は同じクリエイターであるファッション・デザイナーの方々に対して相応のリスペクトを抱いているらしく、いつもの意地の悪さは割と控え目に抑えられている。

勿論、新進気鋭のカメラマンの引抜きを巡って3人の女性が屈辱的な体験を味わう、といったエピソードも登場するのだが、彼女たちはいずれもファッション雑誌の編集者であり、クリエイターの範疇には入らない。また、作中で犬の糞を踏みつけてしまうのも、ファッションを金儲けの手段としてしか考えていない人物ばかりである。

これに対し、ファッションショーのシーンはいたってマトモに扱われており、美形のモデルさんたちが色とりどりの衣装を身に纏ってランウェイを闊歩する様は、ファッションに全く縁のない俺が眺めていても、なかなか楽しいもの。フェリーニだったら、ここでもう一工夫あったような気もするが、まあ、それが両者の資質の違いなんだろう。

また、ハリウッド・スター以外に、フランスやイタリアの大物俳優が大勢顔を揃えているのも本作の大きな魅力であり、映画の序盤で命を落とすオリヴィエ(ジャン=ピエール・カッセル)の正妻と愛人という形で、ソフィア・ローレンとアヌーク・エーメのいまだ変わらぬ美しいお姿を拝むことが出来る。

ということで、アルトマン作品としては比較的コメディ色の強い作品であり、カラフルで美しい映像のおかげもあって、とても楽しく見ることが出来る。本来なら、あの衝撃的なラストシーンもゲラゲラ大笑いしながら見るべきなんだろうが、思わず息を呑んでしまったのは、まあ、私の不徳の致すところです。