1998年作品
監督 シェーカル・カプール 出演 ケイト・ブランシェット、ジェフリー・ラッシュ
(あらすじ)
16世紀の英国。カトリック派の女王メアリーの死去に伴い、新教派としてロンドン塔に幽閉されていたエリザベス(ケイト・ブランジェット)は弱冠25歳でイングランドの新女王に即位する。宗派間の対立で揺れる国内の政情を安定させるため、周囲からはフランス、スペインといった強国との間の政略結婚を迫られるが、彼女は新教派のウォルシンガム(ジョフリー・ラッシュ)の助けを得て、自ら権力基盤の強化を図ろうとする….
先日公開された「エリザベス:ゴールデン・エイジ(2007年)」の前編。
エリザベスは、ヘンリー8世とあのアン・ブーリンとの間に出来た子供ということで、本作で“新教”と呼ばれているのは、プロテスタントの意味ではなく、いわゆる英国国教会のこと。まあ、エリザベス自身は強硬な反カトリックという程でもなく、“同じ神様を信じているんだから、お互い仲良くすればいいんじゃない”っていう立場なんだけど、ローマ法王の方は彼女の王位継承権を認めようとしないばかりか、暗殺まで指示する始末。
一方、彼女にはロバート・ダドリーという恋人がいることもあって、周囲から勧められる政略結婚にもいま一つ踏み切れないでいる訳なんだけど、最後は切れ者ウォルシンガムの助言に従い、強硬手段に訴えて政敵を一掃。女性であることを捨てて絶対君主になる道を選ぶ。この政敵を次々と惨殺していくシーンは、「ゴッドファーザー(1972年)」終盤の連続殺戮シーンを彷彿させます。
主演のケイト・ブランジェットは、これまで「ロード・オブ・ザ・リング(2001年)」のシリーズと「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国(2008年)」でしか見たことが無かったんだけど、出世作と言われる本作での彼女の演技は、繊細な美しさとピンと張りつめた緊張感とが相俟って一種独特の雰囲気を醸し出しており、なかなかの迫力を感じさせる。
それに対し、脚本や演出においてはこれといって傑出したものは見出すことはできず、特に、ロバート・ダドリーが実は既婚者だったという展開には、“もっと早くから判らなかったの?”とツッコミを入れさせていただきたいところ。せっかくの老名優リチャード・アッテンボローの起用も、まあ、元気な顔が見られて嬉しかったというレベルに終わってしまっている。
ということで、なかなか豪華な俳優陣を揃えたのにもかかわらず、演技が小間切れのせいもあって、主演のケイト・ブランジェット以外、各出演者の個性を十分に引き出せていないところがとても残念。史劇ならではの大芝居を、もっとじっくりと見せて欲しかったところです。