マディソン郡の橋

1995年作品
監督 クリント・イーストウッド 出演 クリント・イーストウッドメリル・ストリープ
(あらすじ)
アイオワ州の片田舎の農場に住んでいるフランチェスカメリル・ストリープ)は、まじめな夫のリチャードとそろそろ言うことを聞かなくなってきた二人の子どもとの四人暮らし。夫と子ども達がイリノイ州で開かれる家畜の品評会に泊まりがけで出掛けることになり、一人で留守番をしていたある日、ローズマン橋へ行く途中に道に迷ったという一人の男性が彼女の農場を訪ねてくる….


クリント・イーストウッドメリル・ストリープの共演で大ヒットしたメロドラマ。

とても有名な作品であり、長年、一度くらいは見ておかなければいけないと思っていたのだが、中年の男女による不倫がテーマということでなかなかその気になれず、実に公開から20年が経過してようやく鑑賞の運びとなった。

さて、案の定というか、ヒロインのフランチェスカとその浮気相手であるロバート・キンケイド(クリント・イーストウッド)とのラブシーンからはロマンチックな雰囲気を感じ取ることは出来なかったものの、脚本が上手いので結構楽しめる。おそらく、主人公たちよりも若い年齢のときに見ていたら、その前に体が拒否反応を示してしまった可能性が高いが、まあ、これも年を取ったことのメリットの一つなのかもしれない。

特に面白かったのが、終盤、フランチェスカがロバートに別れを告げるときのセリフであり、まるで「カサブランカ(1942年)」のラストでボギーがバーグマンに告げた決めゼリフの“僕たちにはいつもパリ(の思い出)がある”の女バージョンみたい。まあ、家族に対する責任感と言っても良いのだろうが、素晴らしい体験が罪悪感によって蝕まれていくことを防ぐための大人の知恵でもあるのだろう。

それにしても、メリル・ストリープの太い二の腕と自分自身の禿げあがった前頭部の組合せでも立派にメロドラマとして成立することを証明して見せたクリント・イーストウッドの監督としての自信は見上げたものであり、人間としての弱さでは無く、むしろ逞しさを感じさせる作品になっていた。

ということで、この作品を鑑賞している最中、いつの間にか妻に浮気されてしまう夫のリチャードの立場から本作を眺めている自分を発見して思わず苦笑。前頭部の髪の毛の量では間違いなくこちらがリードしているものの、さすがに相手がイーストウッドとあっては全く敵う気がしませんでした。