エビータ

1996年作品
監督 アラン・パーカー 出演 マドンナ、アントニオ・バンデラス
(あらすじ)
アルゼンチンの田舎町で私生児として生まれたエバ(マドンナ)は、興行のために町を訪れたタンゴ歌手の愛人になり、彼にくっついてブエノスアイレスへやってくる。何のコネも無い彼女に都会の風は冷たかったが、パトロンを次々と乗り換えることにより、あれよあれよという間に女優へと転身。地震被災者のチャリティーショーに出席した彼女は、そこでショーの主催者であるペロン大佐に出会う….


妻と一緒に見るミュージカル映画の第5弾。

マドンナ主演ということで、“イロモノ”的な色彩が濃いことから、長らく見るのを敬遠してきた作品であったが、今回拝見させていただいて、その認識が完全に間違っていたことを痛感。マドンナもアントニオ・バンデラスも、共に素晴らしい歌や演技を披露してくれている。

実在した元アルゼンチン大統領夫人エバ・ペロンをモデルにしているのだが、あまりミュージカル向けではないと思われる当時のアルゼンチンにおける政治情勢等についても要領よく描かれており、彼女がどのような時代を生き抜いたのか、俺のような勉強不足の人間にも十分に理解できるようになっている。

上手いなあと思ったのは、狂言回し役のアントニオ・バンデラスの使い方であり、ウェイターやバーテン、労働者等、色々なキャラに姿を変え、その時々のエバの生き方を第三者の目から客観的に評価する。エンドクレジットでは彼の役名は“チェ”となっていたが、見終わってから調べたところ、チェ・ゲバラをモデルにしているとのことだった。

ストーリー的には、彼女がファーストレディの座まで駆け上がっていく前半部分が特に面白く、バルコニーの上から民衆に向けて“Don't cry for me Argentina”を歌うクライマックス・シーンを見たときには“傑作!”と思ってしまったのだが、それに対して、終盤の盛り上がりに欠けるところがとても残念。まあ、史実だから仕方ないのだが、あそこで彼女を死なせてしまうのはあんまりだと思った。

ということで、監督のアラン・パーカーは、これまでも「フェーム(1980年)」や「ザ・コミットメンツ(1991年)」といった作品で音楽モノに強いところを見せていたが、本作での演出も実に素晴らしい。劇団四季でも「エビータ」を上演するそうであるが、正直、本作を見た後では恐くてなかなか見に行けそうにありません。