甘い生活

1959年作品
監督 フェデリコ・フェリーニ 出演 マルチェロ・マストロヤンニアニタ・エクバーグ
(あらすじ)
作家になることを夢見てローマに出てきたマルチェロマルチェロ・マストロヤンニ)も、今ではしがないゴシップ新聞の記者。彼との結婚を切望する女性エンマと同棲しているものの、取材の際に知り合いになった富豪の娘マッダレーナやハリウッドのグラマー女優シルヴィア(アニタ・エクバーグ)等との夜遊びは一向に止む気配もなく、毎日のように朝帰りを繰り返す….


フェデリコ・フェリーニの代表作の一本。

日々自堕落な生活を送っているマルチェロ青年であるが、作家になる夢をまだ完全に諦めた訳ではなく、新聞記者という現在の職業はそんな彼の宙ぶらりんな気持ちを良く表している。内心では、年長の友人であるスタイナー(アラン・キュニー)のような、家庭と知的生活とを両立させた静かな生き方に憧れを抱いているものの、今の彼の実力では到底実現は望めそうにない。

しかし、幸せそうに見える自身の日常生活に内在する不安を口にしていたスタイナーが、終盤になって、幼い二人の子どもを道連れにして自殺を遂げたのを知ると、そんなマルチェロの生活も一変。ナイーブさを完全に失い、派手な広告関係の仕事に転職した彼に最早“天使”の声は届かないことを宣告するラストシーンは、とても印象的だった。

まあ、上映時間は185分ということで、他にも興味深いエピソードが色々と登場するのだが、本作のより直截的な魅力は何と言ってもその映像美であり、ローマ時代の水道橋の遺跡の上からキリスト像を吊り下げたヘリコプターが姿を現すというショッキングなオープニング・シーンには、もう、いきなり圧倒されてしまう。

また、公開当時35歳という若々しいマルチェロ・マストロヤンニはとても格好良いし、アニタ・エクバーグやアヌーク・エーメをはじめとする女優陣も美人揃い。これは、あまり女性の趣味が良いとはいえない(?)フェリーニの作品の中では、特筆すべきことだと思う。

ということで、難解という前評判の故、見るのが延び延びになっていた作品であるが、実際に拝見してみるとこれが予想外に面白い作品。引き続き、未見のものを中心に彼の作品を楽しませて頂こうと思います。