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1963年作品
監督 フェデリコ・フェリーニ 出演 マルチェロ・マストロヤンニ、アヌーク・エーメ
(あらすじ)
一人で温泉地に保養にやって来た高名な映画監督のグイド(マルチェロ・マストロヤンニ)。しかし、新作映画を構想中の彼のことを世間は放っておいてくれず、さらには浮気相手の中年女や映画のプロデューサーまでが押しかけて来る始末。そんな現実に押し潰されそうになる彼に唯一残された道は、白昼夢の世界に逃避することであり、若くて美しいクラウディアとの出会いを夢見たり、少年時代に戻ったり….


フェデリコ・フェリーニの代表作として世評の高い作品。

随分昔にビデオで一度拝見しているはずであるが、例によって(?)そのときの記憶は断片的にしか残っておらず、Blu-ray Discによる美しいモノクロ映像を新鮮な気持ちで見直すことが出来た。

ストーリーは、新作映画の構想に行き詰った映画監督の苦悩をメインに描いているのだが、この監督がフェリーニの分身であることは一目瞭然。俺も、高校生時代、嫌いだった国語の教師からの作文の課題(=テーマは自由だった。)に対し、“何も書くことがない”という内容の作品を提出してお茶を濁した経験があるが、この作品のアイデアも基本的にはそれと同じこと。

まあ、それを堂々と商業映画でやってのけてしまったものだから、この作品を見た当時の映画関係者が受けた衝撃や羨望(?)の大きさは想像に難くないところであり、彼等がこぞって本作を絶賛した気持ちも良く理解できる。

しかし、俺を含む一般の観客にとってみれば、本作は単なる艶笑ドタバタ喜劇に他ならず、芸術性なんかはあまり気にすることなく、目の前で起きていることをそのまま見て楽しめば良い。本作には、グイドの妻役のアヌーク・エーメやおそらく彼女自身の役で出演しているものと思われるクラウディア・カルディナーレ以外にも、いろんなタイプの“美女”が大挙出演しており、男なら彼女たちの姿を眺めているだけでも十分元は取れるだろう。

ということで、本作を見直して改めて感じたのは主演を務めるマルチェロ・マストロヤンニの圧倒的な素晴らしさ。普通の俳優ならどんな顔をして演じればよいのか迷ってしまうようなナンセンスなシーンでも、全くまごつくような様子は見せず、堂々と、しかも軽妙に演じているのには、ただただ感心させられてしまいました。