フライド・グリーン・トマト

1991年作品
監督 ジョン・アヴネット 出演 メアリー・スチュアート・マスターソンメアリー=ルイーズ・パーカー
(あらすじ)
アメリカ南部のアラバマ州。夫婦生活の倦怠期にある主婦のエヴリンは、夫の叔母のお見舞いに訪れたある病院で老婦人ニニーと知り合いになる。話好きの彼女は、男勝りの義妹イジーメアリー・スチュアート・マスターソン)とその友人ルース(メアリー=ルイーズ・パーカー)の話を語って聞かせるが、思わずその話に引き込まれてしまったエヴリンは、後日、再びニニーの元を訪ねる….


ちょっと奇妙な題名が昔から気になっていた作品をようやく鑑賞。

ストーリーは、エヴリン&ニニーによる“現在パート”とイジー&ルースの“昔話パート”を交互に取り上げながら、イジーの奔放で自由な生き方に感銘を受けたエヴリンが、自らも自立した女性へと生まれ変わっていく様をコミカルなタッチで描いている。

本作全体を通じてのヒロインであるイジーは、今で言うなら性同一性障害の疑いが強い女性であるが、加えて、正義感が強く、いつでも弱い者の味方。そんな彼女が、DVや黒人差別が横行していた当時のアメリカ南部で、自らの意思に忠実に生きていく姿はなかなか爽快ではあるが、正直、ちょっと“出来過ぎ”の印象は免れず、まあ、このあたりには語り手であるニニーの“創作”が相当入っているのだろう。

一方、時間配分は少ないものの、現在パートにおけるエヴリンとニニーの掛け合いがとても面白く、少々重いテーマを扱っている昔話パートを見た後の格好の気分転換になっている。とても公開当時82歳とは思えぬ、ニニー役のジェシカ・タンディのキュートな演技も見事だが、エヴリンに扮したキャシー・ベイツの怪演ぶりは群を抜いており、迫力の点では、主役である昔話パートの二人を完全に食ってしまっている。

ちなみに、題名の“フライド・グリーン・トマト”というのは、その名のとおり、熟す前の青いトマトを輪切りにしてフライに揚げた料理であり、イジーとルースが共同経営しているカフェの看板メニュー。おそらく、女性という“ころも”の下に、青々しい少年の心を持ち続けたイジーのことを意味しているのだろう。

ということで、見ている途中で“ニニーの正体はイジー?”という疑問が湧いてくるのだが、ラストの種明かし(?)が中途半端なため、確信が持てない。まあ、どちらでも大した違いは無いのだが、ニニーのダウン症の息子の話までがホラ話だとは思いたくないので、個人的には、別人であるということにしておきましょう。