1996年作品
監督 ロバート・アルトマン 出演 ジェニファー・ジェイソン・リー、ミランダ・リチャードソン
(あらすじ)
1930年代の米国カンザス・シティ。電報会社で働くブロンディ(ジェニファー・ジェイソン・リー)は、強盗に失敗して黒人ギャングに拉致されてしまった恋人のジョニーを救うため、地元の有力者であるヘンリー・スティルトンの夫人キャロリン(ミランダ・リチャードソン)を誘拐する。しかし、アヘン中毒のキャロリンを連れての逃避行はそう簡単には行かず、女二人して街中を彷徨うことに….
今週のアルトマン作品は、自身の生まれ故郷を舞台にしたギャング映画。
音楽や選挙を取り上げているあたり、ちょっと「ナッシュビル(1975年)」に設定が似ているのだが、舞台が1930年代のカンザスということで、こっちで流れてくるのはレスター・ヤングをはじめとする黒人ミュージシャン達による強烈なジャズ・ミュージック。ジョニーが拉致されている「ヘイヘイ・クラブ」では、若きジャズメンによるジャム・セッションが一晩中行われており、それが本作の魅力的なBGMになっている。
導入部分こそ、「ナッシュビル」同様の群像劇を思わせる雰囲気があるが、間もなくストーリーはブロンディによる誘拐劇へと収束していき、キャロリンの夫で大統領顧問のヘンリー・スティルトンの圧力によってジョニーが開放されるのを待っている間の、ブロンディ&キャロリンによる逃避行の描写が中盤以降の大半を占めている。
本作のヒロインであるブロンディは、映画スターのジーン・ハーローに憧れているだけで、実際はブロンドではないのだが、映画のラスト近くでは、髪を脱色し、白いドレスを身に付けて、見事にジーン・ハーローに変身して見せてくれる。しかし、実際の彼女は、セクシーという雰囲気からは程遠い小柄な女の子であり、無謀な誘拐を含め、彼女の様々な面における“無理している”感が見ていてとても痛々しい。
このブロンディを好演しているのは、「ショート・カッツ(1993年)」にも顔を見せていたジェニファー・ジェイソン・リーという女優さんであるが、彼女に限らず、キャロリン役のミランダ・リチャードソンや黒人ギャングのボスに扮していたハリー・ベラフォンテ等も、それぞれ魅力的な演技を見せており、やはりこのへんはアルトマンの手腕によるものなのかなあ。
ということで、脚本的にはちょっと弱いような気もするが、そんな弱点を補ってくれているのが「ヘイヘイ・クラブ」で繰り広げられる熱いジャム・セッションの様子。現在の一流ミュージシャンによって再現されたレスター・ヤングとコールマン・ホーキンスによるテナーバトルは、本作の最大の見所となっています。