第三の男

1949年作品
監督 キャロル・リード 出演 ジョセフ・コットン、アリダ・ヴァリ
(あらすじ)
第二次大戦後のウィーン。旧友ハリー・ライムの招きによってこの街にやってきたアメリカ人作家のホリー・マーチン(ジョセフ・コットン)は、到着早々、ハリーが交通事故によって死亡したことを知らされる。しかし、葬儀に立ち会っていたイギリス軍のキャロウェイ少佐から、ハリーがある闇取引に関与していたという話を聞いたマーチンは、友人の死の真相を探るため、しばらくの間、ウィーンに留まることに….


今更言うまでもない、映画史上に残るキャロル・リードの大傑作。

先日、県総合文化センターでやっていた「野口久光グラフィックワーク ジャズとシネマの黄金時代」をたまたま家族で見る機会があったのだが、そのときに話題に出たのがこの傑作映画。俺の“この作品を映画史上のNo.1に推す人も沢山いる”という言葉に興味を持ってくれた妻と娘のリクエストによって、本日、我が家での鑑賞会開催となった。

さて、俺がこの作品を見るのは軽く10回を超えていると思うが、もちろん、妻と娘は今回が初めて。最初の頃は、そんな彼女等の反応がちょっと気になったのだが、間もなく映画の世界に引き込まれてしまい、それから先は久しぶりに見る名作の魅力を十分に堪能させていただく。ストーリーは完全に頭に入っているものの、オーソン・ウェルズの出番が極めて限定されていることに改めて驚かされる。

まあ、この作品の素晴らしさについては、これまで多くの映画ファンによって語り尽くされており、今更付け加えるようなことはないのだが、個人的にはジョセフ・コットン扮するホリー・マーチンの健気なまでの“愚直さ”が本作の最大の味わいだと考えており、この見解には、彼と同様、ハリーやキャロウェイにはなれっこない男の贔屓目も当然入っている。

ちなみに、妻と娘も、慣れない白黒映画を最後まで見続けてくれて、まずは一安心。淀川先生の解説付きDVDで鑑賞したため、操作に手間取っている間に“実はハリーは生きている”等のネタバレをされてしまったり、ロバート・クラスカーの凄さが十分伝わらない残念なレベルの映像だったにもかかわらず、一応“面白かった”と言ってもらえた。

ということで、親の趣味を子どもに押し付けるのは嫌いなため、これまで、白黒映画の名作DVDを家族と一緒に鑑賞するようなことは意識的に控えてきたのだが、考えてみれば娘も自分の好みはとうに確立しているお年頃。これからは、機会を見つけて今回のような鑑賞会を開催させていただこうと思います。