ゴスフォード・パーク

2001年作品
監督 ロバート・アルトマン 出演 マギー・スミスケリー・マクドナルド
(あらすじ)
1932年11月のイギリス郊外。トレンサム伯爵夫人(マギー・スミス)は、姪夫婦であるウィリアム・マッコードル卿とシルヴィア夫人から週末のハンティング・パーティへの招待を受け、新しいメイドのメアリー(ケリー・マクドナルド)をお供にゴスフォード・パークへやってくる。そんな賓客たちをもてなすため、マッコードル家の使用人は大忙しであり、各ゲスト付きのメイド等と協力してパーティの準備に余念が無かった….


今回のロバート・アルトマンお得意の群像劇は、イギリス郊外のカントリーハウスを舞台にした殺人ミステリイ。

とはいっても、アルトマン監督にスタンダードな謎解き映画を期待するのは所詮無理な話であり、本作でも、ようやく殺人が起きるのは何と映画も後半を過ぎてから。そして、それまでは第二次世界大戦以前におけるイギリス上流階級の暮らしぶりが描かれるのだが、これがなかなか興味深い。

ゴスフォード・パークでの生活は、貴族たちが優雅な暮らしを送っている“階上”と、それを支える使用人たちが生活する“階下”から構成されているのだが、使用人たちは階上において自身の存在感を示すことがタブーとされている一方、空気のようにどこにでも自由に出入りすることが出来る。

まあ、このことがミステリイの基本的なネタになっているのだが、そもそもこのような二重構造が成立する背景には、使用人を自分たちと同じ人間とも思わない貴族たちの傲慢さが存在する訳であり、作中でも使用人の手助け無しには何も出来ない彼等の無能さや、優雅な仮面の下で金策にあくせくしている姿が痛烈な風刺の対象にされている。

また、一般の映画では描かれることの少ない使用人たちの生態が克明に描かれているのも本作の魅力の一つであり、ゲスト付きの使用人を主人の名前で呼んだり(=メアリーは、マッコードル家の使用人から“ミス・トレンサム”と呼ばれる。)、食事をするときも主人の地位に応じて席順が決められる、といった彼等自身のルールは哀しくも滑稽だった。

ということで、全体的にはなかなか面白い作品ではあるが、例によって登場人物が多い上、それを演じているのが普段あまり見慣れない英国人俳優ということで、とてもじゃないが顔と名前が覚えきれない。幸い、ストーリーを理解する上での大きな障害にはならなかったものの、見ている間中、何とも落ち着かない気分でした。