ガンジー

1982年作品
監督 リチャード・アッテンボロー 出演 ベン・キングズレーキャンディス・バーゲン
(あらすじ)
1893年のイギリス領南アフリカ連邦。イギリスで弁護士資格を取得した青年弁護士のガンジーベン・キングズレー)は、列車の一等車に乗っていたところ、白人の係員から“インド人は三等車に移るように”と指示される。同じ大英帝国の市民だからとその指示を拒否した彼は、結局、その列車から放り出されてしまうが、このことが契機となって、インド人差別撤廃のための運動を始める….
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インド独立の父として知られるマハトマ・ガンディーの半生を描いた大作。

先日見た「素晴らしき戦争(1969年)」のDVDに入っていた特典映像で、リチャード・アッテンボロー監督が本作にかけていた執念みたいなものを知り、見てみることにしたのだが、実際、とても風格のある立派な作品に仕上げられており、第55回アカデミー賞で主要部門を独占したというその“実力”は半端ではなかった。

ガンディーが、最初は南アフリカで活動していたというのは本作を見て初めて知った訳であるが、例の“非暴力・不服従”という有名な運動方針はそこでも大きな効果を現す。俺は、長い間、このアイデアはインドの古代哲学かなんかに根ざすものなんだろうとボンヤリ考えていたのだが、本作を見て、それがマスコミの存在なしには成り立たないものであることを知り、ちょっとビックリ。意外に現代的かつ西欧的なアイデアだったんだなあ。

また、“非暴力・不服従”が通用するのは、ある程度、人権思想みたいなものを尊重する相手に限られるようであり、残念ながらインド国内における宗教対立の改善にはほとんど役に立たない。そして、そんなときに使う奥の手が“断食”であり、まあ、一種の脅迫みたいなものなのだが、ガンディーがこの“非暴力・不服従”と“断食”という二つのツールを上手く使い分け、インドを独立に導いていくストーリーはとても面白かった。

主演のベン・キングズレーは、ガンディーの青年期から晩年までを一人で演じているのだが、どちらを演じているときも全く違和感がないのというのはちょっと凄い。また、数十万といわれるエキストラを使っての撮影は迫力十分であり、CG技術がどんなに発達しても、本作が漂わせているような“風格”までは表現できないような気がした。

ということで、1919年に起きたアムリットサル虐殺事件のこともきちんと描かれているのだが、それを見たからといって特にイギリス人が残忍な民族だとは思わない。我が国では、第二次世界大戦当時の戦争犯罪を映画等で取り上げることが一種のタブーのようになっているが、大変嘆かわしいことであり、一日も早くアッテンボローのような勇気のある映画人が現れることを望みます。