パフォーマンス

1970年作品
監督 ドナルド・キャメル、ニコラス・ローグ 出演 ジェームズ・フォックスミック・ジャガー
(あらすじ)
暴力組織の一員であるチャス(ジェームズ・フォックス)は、仕事のためなら手荒な真似も厭わない危険な男。仕返しに来たチンピラを射殺したことが原因で、殺人事件の巻き添えになることを恐れる組織のボスから追われる立場になってしまった彼は、身分を偽って、元ロック・スターのターナーミック・ジャガー)の屋敷に身を隠すが、そこではセックスやドラッグ漬けの生活が….


ミック・ジャガーを主役に迎えたニコラス・ローグの(共同監督ではあるが)初監督作品。

古くからのローリング・ストーンズのファンの一人として、本作がミック・ジャガーの映画デビュー作であるという知識は当然有していたのだが、昔読んだ雑誌の記事では“失敗作”扱いだったような印象が強く、ビデオやDVDが発売されてもあまり見る気は起きなかった。ところが、この度、ニコラス・ローグの監督デビュー作でもあることを知って、興味が再燃という次第。

さて、序盤では、組織におけるチャスの働きぶりが紹介されるのだが、育ちの良さそうな風貌にもかかわらず、平気で一般市民を恫喝する姿からは暴力的な匂いが色濃く漂ってくる。自宅に忍び込んだチンピラとの凄惨な格闘シーンもなかなかの迫力であり、「時計じかけのオレンジ(1971年)」の前年の作品であることを考えれば、公開当時、かなり衝撃的な映像として受け取られたのではなかろうか。

しかし、その後、物語の舞台がターナーの屋敷に移ると作品の雰囲気も一変。まあ、ヤクザとはいえ堅物のチャス君が、セックスやドラッグ、そしてロック・ミュージックの世界にのめり込んでいく、というストーリーなんだろうが、もう一人の主人公であるターナーに扮するミック・ジャガーの歌以外、あまり記憶に残るものが無いというのが正直な感想。

そうはいっても、時期的には「ベガーズ・バンケット」や「レット・イット・ブリード」の頃に当たる訳であり、その当時のミックの歌が悪かろうはずがない。エンドロールでは、アルバムデビュー間もない頃のランディ・ニューマンライ・クーダーの名前を確認することも出来、今聴いても全く古さを感じさせない素晴らしいパフォーマンスを堪能できる。

ということで、DVDの特典映像に入っていたインタビューによると、配給会社からはミックの登場シーンを早くするよう再三指示があったそうであり、序盤の暴力シーンにおける場面転換の素早さはその影響なのかもしれない。しかし、全体的に見るとそれが良いアクセントになっており、決して作品の瑕にはなっていませんでした。