バレエ・カンパニー

2003年作品
監督 ロバート・アルトマン 出演 ネーヴ・キャンベルマルコム・マクダウェル
(あらすじ)
シカゴに本拠地を置く名門バレエ・カンパニー“ジョフリー・バレエ・オブ・シカゴ”のダンサーであるライ(ネーヴ・キャンベル)は、怪我をしたマイラの代役として、世界的な振付家ラー・ルボヴィッチの新作で主役を務めることになる。野外劇場で行われた公演は、突然の雷雨にもかかわらず、観客の絶賛を博し、芸術監督のミスターA(マルコム・マクダウェル)からも高い評価を受ける….


ロバート・アルトマンが「ゴスフォード・パーク(2001年)」に続いて発表した作品。

一応、大作「青い蛇」の製作過程を描くというのがメインのストーリーであり、その作品のクライマックスでソロを踊ることになるライがヒロインということなんだろうが、いわゆる“バックステージもの”とは全く異なった雰囲気を有する作品であり、ライバル同士の主役争いといったドロドロした人間関係なんかは一切描かれていない。

練習中にアキレス腱を切ったり、急に役を降ろされたりといったお馴染みのエピソードは出てくるが、まあ、結局はただそれだけのことであり、バレエ公演の方はそういった出来事とはまるで無関係のように淡々と続けられていく。また、我侭なベテラン・ダンサーや自分の居場所を見つけられない新人といった、いわくありげなキャラクターも登場するものの、やはりストーリーに大きく関わるようなことはない。

まあ、「The Company」という原題からも分かるとおり、個々の登場人物というより、バレエ団そのものが主役のような映画であり、こういった作品にはアルトマンお得意の群像劇が良く似合う。「ゴスフォード・パーク」で懲りたので、無理に登場人物の顔や名前を覚えようとはせず、自然体で眺めていたのだが、覚えておくべき人物はちゃんと記憶に残っていた。

また、本作の最大のウリは、その美しいバレエ・シーンであり、実在するジョフリー・バレエ・オブ・シカゴの現役ダンサーたちによる公演の数々を、観客席にいるかのように楽しむことが出来る。主役のネーヴ・キャンベルもバレエ学校の卒業生とのことであり、他のダンサーと一緒に踊っていても全く違和感はなかった。

ということで、まあ、通常の映画の楽しみ方とはちょっと違うのかもしれないが、これだけ美しいバレエを見せて頂ければ個人的には何の不満も無く、「ブラック・スワン(2010年)」に欠けていたものがここには沢山詰まっている。なお、本作を楽しむためには、事前に他のアルトマン作品を2、3本見ておいた方が良いような気がします。