南部の人

1945年作品
監督 ジャン・ルノワール 出演 ザカリー・スコット、ベティ・フィールド
(あらすじ)
アメリカ南部の農場で働いているサム(ザカリー・スコット)は、自作農になろうと一念発起。川沿いにある未開拓の土地を借り受け、妻のノーナ(ベティ・フィールド)や幼い子どもたち、それに口やかましい祖母を連れて町から引っ越してくるが、彼らを待っていたのは廃屋同然のあばら家だった。しかし、誰からも指図されない自由な農民の生活を夢見る彼は、そんな逆境にもめげずに開墾に取り組むが....


引き続き、ジャン・ルノワールがハリウッドで撮った作品を鑑賞。

ハリウッド時代のルノワール作品はあまり高い評価を受けていないらしいのだが、そんな中で本作だけはそれなりの評価を得ているらしい。アメリカ人のルーツである開拓者魂をテーマにした作品ということで、フランス人の監督が取り上げるのには少々奇異な感じがしないでもないが、作品自体はなかなか良く出来ている。

雄大な南部の自然の描写も見事であり、米国人の監督が撮った同種の作品と比べてみても遜色ない出来であるが、その一方で、僻みっぽい祖母や決して主人公に救いの手を差し伸べようとしない隣人といった、この手の作品にはちょっと珍しいキャラクターが登場するのも面白く、このへんは外国人監督ならではのリアリティなのかもしれない。

すべてが良い方向へ向かうと思われた次の瞬間に悲劇が訪れるという展開は、「河(1951年作品)」と一種通じるところがあり、それをノーナの笑顔一つでハッピーエンドにしてしまうという力技にも、まあ、それなりの説得力はある。ただし、現実問題として考えた場合、本当にあの結論で良かったのかというと、正直、大いに疑問が残るところ。

出演者が地味目の俳優さんばかりというのは少々寂しいが、皆さん、演技力の方は確かなようであり、そんな中で非協力的な隣人を演じたJ・キャロル・ネイシュ(=ボギーの「サハラ戦車隊(1943年)」で例のイタリア人捕虜役を演じ、アカデミー賞助演男優賞にノミネートされた人)の悪役ぶりが特に印象に残った。

ということで、今回、ルノワール作品を2本続けて拝見させていただいたところであるが、彼の作品にはまだまだ未見の作品も多く、今後、ちょっと力を入れて鑑賞の機会を増やしていきたいと思います。