1943年作品
監督 ジュリアン・デュヴィヴィエ 出演 ベティ・フィールド、ロバート・カミングス
(あらすじ)
ニューオルリンズでドレスの仕立てをして暮らしているヘンリエッタ(ベティ・フィールド)は自分の容貌に自信が持てず、いつも暗い顔。密かに思いを寄せる学生のマイケル(ロバート・カミングス)にも自分の気持ちを伝えられずにいたが、あるマルディグラの夜、不思議な老人の勧めに従って美しい仮面を付けて祭りに参加してみると、マイケルの方から彼女に話しかけてくる….
デュヴィヴィエがハリウッドで撮った3話からなるオムニバス作品。
夢見が悪かったことを気にしている実業家のドークス(ロバート・ベンチリー)に対し、友人のデイヴィスが“精神の肉体に与える影響”をテーマにした3つの物語を紹介するという形でストーリーは進んでいくのだが、(あらすじ)で紹介したのはその1話目。3話の中では出演者の顔ぶれが一番地味なのだが、作品の幻想的な雰囲気に主演の若い二人が見事にハマっており、内容的にも一番良くまとまっている。
これと対照的なのが、シャルル・ボワイエとバーバラ・スタンウィックという2大スターが共演する第3話。正直、お話自体はそう大した内容ではないのだが、この2人の醸し出すゴージャスな雰囲気の前には細々としたストーリーはむしろ邪魔であり、彼等の演技を黙って見られればそれで十分。ちなみに、バーバラ・スタンウィックが演じているのは宝石泥棒の罪で警察から追われている女性ジョアン・スタンレーなのだが、当時の観客は彼女の顔を見ただけでジョアンが悪女であることを理解出来たに違いない。
残る第2話は、良くも悪くも、自信に満ち溢れた弁護士マーシャル・タイラーに扮したエドワード・G.ロビンソンの一人舞台であり、トーマス・ミッチェル演じる占い師の思わせぶりな一言をきっかけにして自信家のタイラーが自滅していく様はまさに圧巻。血管が切れそうなくらいのエドワード・G.ロビンソンの熱演と、トーマス・ミッチェルの飄々とした演技との対比もなかなか面白かった。
ということで、ストーリー的に弱い2話、3話は出演者の魅力できちんとカバーしてしまうあたり、ハリウッドの水にすっかり馴染んだ感のあるデュヴィヴィエの采配は実に見事。終戦後も比較的長く米国に止まったフリッツ・ラングが、最後までハリウッド映画としてはどこか異質な作品を作り続けたのとは好対照であるが、まあ、このへんがいかにもデュヴィヴィエらしいところなのでしょう。