小間使の日記

1946年作品
監督 ジャン・ルノワール 出演 ポーレット・ゴダード、ハード・ハットフィールド
(あらすじ)
パリで小間使いをしていたセレスティーヌ(ポーレット・ゴダード)は、新たな奉公先であるランレール家で働くためにある田舎町へやってくる。しかし、その屋敷を牛耳っているランレール夫人や彼女のお気に入りである冷酷な執事ジョゼフの使用人に対する横暴な振舞いに腹を立てたセレスティーヌは、玉の輿に乗っていつか彼女等を見返してやると決意し、早速、お隣のモージェ大尉と親しくなる….


ジャン・ルノワール第二次世界大戦中にアメリカで撮った作品のうちの一本。

セレスティーヌは美人で気立ても良いのだが、自己主張がはっきりし過ぎているところが小間使いとしては致命的な欠点であり、なかなか一箇所で勤めが長続きしないというのもそれが原因なんだろう。

そんな彼女の花婿候補になるのは、変人ではあるが金持ちのモージェ大尉(バージェス・メレディス)、彼女同様(?)上昇志向が強くて狡猾な執事のジョゼフ、そしてランレール家の御曹司ではあるが病弱で生活力の乏しそうなジョルジュ(ハード・ハットフィールド)の三人。

身分的には中産階級、庶民、貴族、キャラクター的にはコメディ、サスペンス、純愛物に区分されるこの三人であるが、そんな中から最終的にセレスティーヌが選んだのは優男のジョルジュということで、まあ、お金よりも純愛という無難な結果に落ち着いた訳であるが、駆け落ち同然に着の身着のままで旅立つ二人の前にはおそらく厳しい現実の壁が待ち受けていることだろう。

本作の時代設定はフランス第三共和政(1870年〜1940年)の黎明期頃と考えられ、以前に拝見したルイス・ブニュエルの「小間使の日記(1963年)」より数十年前の話になっているのだが、セレスティーヌの思考や行動はかなり現代的であり、このへんは身分制度に馴染みの薄いアメリカの観客を意識したジャン・ルノワールの計算だったのかもしれない。

ということで、三人の花婿候補のうちの誰がストーリーの中心になるかによって、作品の雰囲気がコメディからサスペンス、そして純愛物へと目まぐるしく変化するのは面白いのだが、その分、作品の性格が少々ぼやけてしまったという印象は否めない。ラストのハッピーエンドを素直に受け入れられないのは、ジョルジュを演じた俳優さんの線が細すぎたことも大きく影響しているものと思います。